欧州議会が農業政策改革案を可決、環境対策重視で加盟国の裁量拡大

欧州議会は23日の本会議で、2022年~28年を対象とする次期共通農業政策(CAP)の改革案を賛成多数で可決した。農家への所得補助となる直接支払いの平準化や、環境保全に役立つ農業活動に取り組む農家に補助金を上乗せする「グリーニング」の見直しなど、13年の改革を踏襲するとともに、各国がそれぞれの実情に応じて柔軟に対応できるよう、加盟国の裁量を拡大することなどを柱とする内容。近く欧州議会と加盟国の間で最終合意に向けた交渉を開始する。

次期CAPでは引き続き直接支払制度と農村振興策という2つの柱を継続すると同時に、加盟国の裁量を拡大し、環境・気候変動対策や、持続可能な農業経営への移行を重点的に支援する。具体的には加盟国は欧州委員会が設定した目標の実現に向け、自国の課題に対応する上で必要な措置を特定して「戦略計画案」を策定し、欧州委の承認を得て計画案に基づく施策を実施。予め定められた共通の指標に基づき、戦略計画の実施状況や成果を1年ごとに検証し、結果を公表する。

環境保全に資する農業を推進するため、全ての農業者を対象とする直接支払いの受給条件として環境への取り組みを義務付け、直接支払予算の少なくとも30%をグリーニング支払い(基礎支払いの上乗せとして更なる環境基準の達成を受給要件として課すもの)に充てる。また、加盟国は農村振興政策予算の少なくとも35%を環境・気候変動関連対策に配分することが義務付けられる。

直接支払いについては予算の大半が大規模農家に割り当てられている現状を改善し、中小農家への支援を強化するため、予算に上限を設ける。直接支払額が6万ユーロを超える農家に対しては毎年の支払額を段階的に減らし、1農家当たりの支払額の上限を10万ユーロとする。また、加盟国は直接支払に係る予算の少なくとも6%を中小農家の支援に充てることが義務付けられる。

このほか改革案には乳製品の表示ルールを厳格化する項目が盛り込まれており、乳成分が含まれていない製品に「ミルク風」や「チーズスタイル」などの表現を用いることが禁止される。一方、肉を使用せず、肉の風味や食感を再現したベジタリアン向けの製品に「ステーキ」や「ハンバーガー」、「ソーセージ」などの名称を使用することを禁止する案は反対多数で否決された。

上部へスクロール