EU加盟国と欧州議会の代表は5日、「法の支配」に問題がある国に対して、新設するコロナ復興基金による支援とEU予算からの補助金交付を禁止する仕組みの妥協案で合意した。これによって復興基金の2021年1月からの運用開始に向けて大きく前進した。
7,500億ユーロ規模の復興基金は、欧州委員会が市場で調達した資金をEUの中期予算に組み込み、新型コロナによる経済の打撃が大きい国に補助金と融資の形で配分するというもの。EU加盟国が7月の首脳会議で合意していた。
復興基金をめぐる協議では、オランダなど「倹約4カ国」の要求に基づき、法の支配が揺らいでいる国には復興基金だけでなく、EU予算からの補助金交付を禁止する制度の導入が焦点のひとつとなった。標的とされたハンガリー、ポーランドが猛反発し、これが認められるなら復興基金計画そのものに拒否権を発動する構えを示したことから、少数国による問題提起だけでは禁止とせず、加盟国による特定多数決(加盟国の人口に応じて票数を割り当てる投票制度)で判断するという妥協案で合意した経緯がある。
しかし、なお不満とするハンガリー、ポーランドが、復興基金および基金運用で不可欠となるEUの次期中期予算(対象期間2021~27年)をめぐる欧州議会の審議で同問題を持ち出し、議会での承認が決まらない事態となっていた。
同問題を打開するため開かれたEU議長国ドイツと欧州議会の代表による協議では、復興基金による支援とEUの補助金交付を禁止する措置は、ある加盟国が裁判への権力の介入など法の支配の原則を破り、それがEUの健全な財政運営に大きな影響を及ぼすと判断された場合に限って発動するという妥協案で合意した。ハンガリーとポーランドの不満に考慮しながらも、初めて法の支配をEU予算に連動させるシステムを確立する格好となる。
同案によると、ある加盟国が法の支配を順守していないかどうかは、欧州委員会が検証した上で、禁止措置発動を提案する。加盟国は原則的に1カ月以内に提案の可否を決める。採決は特定多数決のため、15カ国以上の賛成が必要となる。
今回の合意によって、欧州議会は復興基金創設を含む次期中期予算案を近く承認する見込み。EU加盟国の最終承認が必要で、ポーランドとハンガリーがなお抵抗するのは必至だが、全会一致ではなく過半数の国の賛成で足りるため、障害とはならない。