英中央銀行のイングランド銀行は5日、新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けている経済を下支えするため、量的金融緩和を拡大すると発表した。国債の買い取り枠を1,500億ポンド(約20兆円)増やし、8,750億ポンドとする。英国では5日からイングランド全域でロックダウン(都市封鎖)が再導入され、経済への打撃がさらに深刻になると予想されることから、追加緩和で景気を下支えする必要があると判断した。政策金利は過去最低の0.1%に据え置く。
4日まで開いた金融政策委員会で、政策委員9人の全会一致で量的緩和の拡大を決めた。中銀は6月に債権の買い取り枠を1,000億ポンド引き上げており、追加緩和は5カ月ぶり。エコノミストらは今回、1,000億ポンドの購入枠拡大を予想していた。社債の購入枠は200億ポンドに据え置かれ、国債と合わせた購入枠は8,950億ポンドとなる。
追加の国債購入は2021年1月に開始し、同年末までに終了する。従来のペースでは20年末頃に購入枠の上限に達する見通しだった。中銀は議事要旨で「市場の機能が悪化すれば購入を加速させる用意がある」とし、2%のインフレ目標を達成するため「必要なあらゆる措置を講じる」と表明した。
ベイリー総裁は記者会見で、英経済の先行きは新型コロナの感染状況やEUとの通商協定の行方などに大きく左右されると指摘。「経済見通しは引き続き異例なほど不透明だ。迅速かつ強力に、協調した行動を取ることが重要だ」と述べた。
中銀は同時に公表した四半期ごとの金融政策報告書で、英経済が新型コロナ前の水準に戻るのは22年第1四半期以降との見方を示し、21年末としていた従来の予想を下方修正した。実質国内総生産(GDP)は20年が8月時点の前年比9.5%減から11%減、21年は9%増から7.25%増にそれぞれ引き下げた。失業率は来年にかけて現在の4.5%から上昇し、21年第2四半期には7.75%に達すると予想している。