英が企業に気候変動の影響開示を義務化、21年に環境債発行へ

英国のスナク財務相は9日、2025年までに気候変動が財務に与える影響に関する情報の開示を企業に義務付けると表明した。21年1月から主要上場企業に開示を義務付け、段階的に対象を拡大する。英国は来年11月にグラスゴーで第26回気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催されることになっており、金融分野における気候変動への取り組みで主導権を握りたい考え。スナク氏は21年中に英国初のグリーンボンド(環境債)を発行する計画も併せて発表した。

気候変動情報の開示義務は、主要20カ国・地域(G20)の要請を受けて金融安定理事会(FSB)が設置した気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、世界に先駆けて制度を整備する。英金融行為監督機構(FCA)は来年1月から、まずロンドン証券取引所のプレミアム市場に上場している優良企業を対象に、TCFDに準拠した情報開示ルールを導入する。22年末までに英国に拠点を置く大企業(非上場を含む)に対象を広げ、25年までの完全実施を目指す。

グリーンボンドの発行は、気候変動対策のための設備投資や技術革新のための資金調達を目的としたもの。グリーンボンド市場はこのところ急速に成長しており、19年の発行額は世界全体で約2,500億ドルと、債券発行額の3.5%を占めた。ただ、英国はこれまでグリーンボンドの発行に慎重な姿勢を示していた。

一方、EU離脱に伴う移行期間終了後の英国とEUの関係に関しては、EUを含む欧州経済圏(EEA)に対して、金融分野で英国とほぼ同等の規制体系を備えていると認めると表明した。EU側は英国に対して同等性評価の判断を下していない。12月末の移行期間終了が迫る中、スナク氏は相互の同等性評価に基づき、来年1月以降も英・EU間で金融サービスの継続を目指す方針を示し、EU側に英国に対する同等性の認定を急ぐよう訴えた。

スナク氏は議会下院で「移行期間終了後も、英国はオープンで魅力的な金融センターであり続ける」と強調。グリーンファイナンスを推進するとともに、デジタル通貨の発行についても検討を進める方針を示した。

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