英政府は11月30日、第5世代(5G)移動通信システムから中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)を排除する計画の一環として、2021年9月から国内の通信事業者がファーウェイ製品を取り付けることを禁止すると発表した。政府は21年1月から同社製品の新規購入を禁止し、27年までに5G通信網から完全排除する方針を打ち出している。通信事業者が規制前の年内にファーウェイ製品を大量に調達し、その後導入することがないよう、完全排除に向けた行程表を更新した。
米国が同盟国に5Gからのファーウェイ排除を迫る中、ジョンソン政権は1月、同社の参入を限定的に容認することを決めた。同社製品を排除した場合、5G通信網の整備に深刻な遅れが生じるとの判断によるもので、ネットワークの中核部分のほか、核関連施設や軍事施設など機密性の高い場所からは排除するほか、基地局など非中核部分への参入についても全体の35%を上限とする方針を打ち出した。しかし、米国が5月にファーウェイに対する制裁を強化したことや、香港情勢をめぐる英中関係の悪化を背景に、7月に完全排除に方針転換した。
ダウデン英デジタル・文化相は「英国の5G通信網から高リスク業者を完全に排除するための明確な道筋を定めた。前例のない、新たな権限を通じて国の安全保障を脅かす通信機器を特定し、使用を禁止する」と述べた。
英政府は今回、5Gインフラの調達先を多様化するため、2億5,000万ポンドを投じる計画も発表した。新たに研究施設を立ち上げるほか、21年中にNECの技術を使った実証実験を行う。欧米を中心にファーウェイ排除の動きが広がる中、5Gインフラ市場ではスウェーデンのエリクソンやフィンランドのノキアがシェアを伸ばしている。NECも英国での実証実験を世界展開の足掛かりにしたい考えだ。
英政府は11月下旬、5G通信網のセキュリティを強化するため、国内の通信事業者がファーウェイ製品を排除しなかった場合、多額の罰金を科せるようにする法案を議会に提出した。ファーウェイを名指ししていないものの、「高リスク業者」の通信機器を使わないよう求める内容で、違反した場合は最大で売上高の10分の1か、1日10万ポンド(約1,400万円)の罰金を科すとしている。