英本土から北アイルランドへの食品輸送が混乱、EU完全離脱による通関手続きで

英国が1日付でEUから完全離脱した影響で、英領北アイルランドで英本土からの食料品の輸送に混乱が生じている。EUと自由貿易協定(FTA)で合意したことで、工業品や食品などの貿易にかかる関税はこれまで通りゼロで維持されるものの、英本土と北アイルランドの間では新たに通関手続きが発生したためだ。英スーパー大手は政府に対し、事態打開に向けて早急にEUと協議するよう求めている。

英国とEUは北アイルランド紛争に終止符を打った1998年の和平合意に基づき、英国がEUを完全離脱した後も北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境を設けないことで合意。その代わり、物流やヒトの往来が滞らないようにするため、北アイルランドが英国の関税区に属すると同時に、工業製品と農産品についてはEUの関税ルールも適用することを取り決めた。このため、大部分の食品では国内の移動にも拘わらず、英本土から北アイルランドへの輸送に際して通関手続きが発生し、一部の業者が未対応なためスーパーマーケットなどに食料品が入荷されない事態が発生した。

3月末になると、食料品の輸送に関する規制はより厳しくなるため、物流の混乱が長期化する恐れがある。このためテスコ、セインズベリー、アズダ、アイスランド、マークス&スペンサーの経営トップは連名でゴーブ内閣府担当相宛てに書簡を送り、3月末までに北アイルランドへの食品輸送に関する問題を解決するため、業界の代表を交えて早急にEUとの協議に入るよう求めた。

英政府報道官はBBCに対して「猶予期間はうまく機能しており、英国と北アイルランドの間では効率的に物品が輸送されている。EUとの新たな取り決めに対処するため、業界側とも緊密に連携している」と述べるにとどめた。

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