英政府は4日、1人に異なる種類の新型コロナウイルスのワクチンを接種した場合の効果、安全性を検証する臨床試験(治験)を開始したと発表した。現在は1回目と2回目の接種で同じ製薬会社のワクチンを使っているが、組み合わせが可能となれば、あるメーカーのワクチンが不足しても柔軟に対応できるようになる。
同国では現在、アストラゼネカとオックスフォード大学、米ファイザーと独ビオンテックがそれぞれ共同開発した新型コロナワクチンが接種されている。治験では2回の接種で、両ワクチンを使い分ける。1回目と2回目の接種の間隔も4週間、12週間に分け、効果と副反応の違いを確認する。
治験は50歳以上のボランティア800人以上を対象に、13カ月にわたって実施するが、早ければ6月にも初期のデータが入手できる見込みという。新たなワクチンが承認された場合は、これも治験に加える。異なる種類のワクチンの接種はエボラ出血熱などで効果があることが確認されているが、新型コロナでの治験は世界初となる。
アストラゼネカとファイザーのワクチンは、どちらもウイルスの遺伝情報に基づいて設計する「遺伝子ワクチン」だが、ファイザー連合のワクチンはメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、アストラゼネカはウイルスベクターワクチンで、技術は異なる。mRNAワクチンは新型コロナウイルスのたんぱく質をヒトの体内の細胞が作り、そのタンパク質に対する免疫ができるシステム。ウイルスベクターワクチンは、無害化されている別のウイルスに新型コロナのウイルスを組み込み、投与する。
治験の責任者であるオックスフォード大学のマシュー・スネイプ教授によると、両ワクチンは抗体の標的となるスパイクタンパク質を細胞内で遺伝子から合成し、免疫反応を引き起こす点では同じで、組み合わせても機能すると予測されている。