欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/29

EU産業・貿易

EU、イラン産ガスの輸入再開を検討

この記事の要約

EUがイランからの天然ガス輸入再開に向けた準備を進めている。ロイター通信が24日伝えた。ウクライナ情勢をめぐって最大のガス供給国であるロシアとの関係が悪化する中、同国からの供給が削減された場合に備えて代替調達先の確保を図 […]

EUがイランからの天然ガス輸入再開に向けた準備を進めている。ロイター通信が24日伝えた。ウクライナ情勢をめぐって最大のガス供給国であるロシアとの関係が悪化する中、同国からの供給が削減された場合に備えて代替調達先の確保を図る。

イラン産ガスの輸入再開には、核開発問題をめぐる対イラン制裁の解除とパイプラインの増設が必要となるが、ロイター通信がEUのエネルギー戦略策定に関わる欧州委員会関係者の話として伝えたところによると、EUはそうしたハードルにも関わらず輸入再開の準備を進めているという。この関係者は、「ロシア産ガスへの依存度を低下させるための中期的な措置として、イランは優先順位がかなり高い」と述べるとともに、イラン産ガスを欧州に輸送することは容易であり、政治的にもイランと西側諸国の関係は明らかに改善していると指摘した。

ロシアに次いで世界2位の天然ガス埋蔵量を誇るイランは、EUにとって有力な代替輸入先の候補だ。欧州議会に提出されたある文書は、「ガス生産での高い潜在能力、国内エネルギー部門の構造改革、西側諸国との関係の正常化がイランをロシアに代わる信頼できる供給国にしている」と指摘。ただし、短期的には核問題をめぐる制裁や大規模なインフラ投資の必要性が輸出再開に向け大きな課題になるとしている。

一方のイランも、欧州へのガス輸出に積極的な姿勢を見せている。ロウハニ大統領は24日にニューヨークで行われたオーストリアのフィッシャー大統領との会談で、「イランは欧州にとって安全なエネルギー供給源となり得る」と語った。ただ、19日に再開された核開発問題を巡るイランと欧米6カ国との協議では、双方の意見の隔たりが依然として大きいことが改めて浮き彫りになっており、交渉期限の11月24日までに最終合意に至る可能性は低いと見られている。このため、輸入再開の前提となる制裁解除には時間がかるとの見方が有力だ。