欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/29

EU産業・貿易

国際ローミング料の上乗せ廃止計画、EU議長国が「フェアユース」制度導入提案へ

この記事の要約

EUは通信分野における単一市場の創設を目的とした規制改革の一環として、EU域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング(相互接続)にかかる上乗せ料金の廃止を検討しているが、新規制の導入時期や移行プロセスをめぐり加盟国の […]

EUは通信分野における単一市場の創設を目的とした規制改革の一環として、EU域内の他の国で携帯電話を使用する際のローミング(相互接続)にかかる上乗せ料金の廃止を検討しているが、新規制の導入時期や移行プロセスをめぐり加盟国の意見調整が難航しているもようだ。12月末まで議長国を務めるイタリアを中心に妥協点を探る動きが本格化する見通しだが、ローミング料金は携帯電話事業者にとって貴重な収益源になっているため業界団体は新たな料金規制に強く反発しており、廃止に向けた各方面との調整は難航が予想される。

EUでは2007年6月に「携帯電話のローミングに関する規則」が制定され、域内の他の国で音声通話、ショートメッセージサービス(SMS)、データ通信を利用する際のローミング料金が段階的に引き下げられている。7月に導入された新ルールにより、EU域内での国際ローミングにかかる上乗せ料金は、初めて料金規制が導入された07年に比べて80~90%引き下げられた。

しかし、欧州委員会は昨年9月、事業者間の公正な競争を促進して消費者に低価格で質の高いサービスを提供するため、16年末までに域内の他の国で携帯電話を使用する際の国際ローミングにかかる上乗せ料金を廃止し、国内と同一水準にする案を提示。これに対し、欧州議会は今年4月、実施期限を1年早めて15年12月15日とする修正案を可決し、現在、加盟国の間で検討が進められている。

ロイター通信によると、イタリアは国際ローミングの上乗せ廃止の具体的な期限には言及せず、音声通話やデータ通信などについて使用容量が一定レベルに達するまでは国際ローミングにかかる料金を国内と同等の水準に抑え、基準を超えた場合に上乗せ料金を課す「フェアユース」と呼ばれるシステムを採用し、移行期間を経てRLAH(roam like at home=国内と同等のローミング料金)と名づけた料金規制を導入する議長案をまとめた。

伊通信省のジャコメッリ次官はロイターの取材に対し、「イタリアとしては国際ローミングの上乗せ廃止を先送りすることは考えておらず、具体的な期日を設定するために異なる立場の国が合意できる妥協点を探っているところだ」と説明。フェアユース構想については「すべての加盟国から良好な反応を得ている」と付け加えた。