2021/4/12

EU情報

EMAがアストラ製ワクチンと血栓の「関連性」確認、英当局は30歳未満に推奨せず

この記事の要約

欧州医薬品庁(EMA)は7日、英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンと血栓の因果関係について、ごくまれな副作用の可能性があるとの調査結果を公表した。英国の規制当局と政府の独立委員会も同日、接種後に血栓が確認 […]

欧州医薬品庁(EMA)は7日、英製薬大手アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンと血栓の因果関係について、ごくまれな副作用の可能性があるとの調査結果を公表した。英国の規制当局と政府の独立委員会も同日、接種後に血栓が確認された例について検証した結果、30歳未満に対しては使用を見送り、別のワクチンの接種を勧めると発表した。ただ、両当局とも死亡や重症化を防ぐワクチンのメリットがリスクを上回るとして、引き続き幅広い年齢層で接種を進めることが重要との見解を示している。

EMAによると、調査した症例の多くはアストラゼネカのワクチン接種後2週間以内の60歳未満の女性に発生しており、「非常にまれな血小板の減少を伴う血栓が発症する可能性がある」と指摘した。主として脳や腹部の静脈などに血栓が確認されたが、これまでのところ年齢や性別によるリスク要因は特定されていないとし、接種継続のメリットを強調した。

一方、英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)によると、英国では3月末までに約2,000万人が同ワクチンを接種し、79人に副反応とみられる血栓を確認した。100万人あたり4人の確率に相当し、内訳は女性が51人、男性が28人。このうち19人が死亡し、11人は50歳未満で3人は30歳未満だった。

英政府の独立委員会は声明で「血栓症は年齢が下がるにつれてわずかながら発生する割合が高くなる傾向にある」と指摘。30歳未満に対してはアストラゼネカ製を使用せず、可能な限りファイザーなど他社製のワクチンを接種するよう勧めた。そのうえで、30歳以上の幅広い年齢層に関しては「接種の利益が副反応のリスクを上回る」と強調した。

世界保健機関(WHO)は7日、声明を発表し、アストラゼネカ製ワクチンと血栓の因果関係について、症例が確認されたのはこれまでに世界で2億人近くが接種したうちの極めて稀なケースだと指摘。「(副反応の)可能性はあるが現時点では確認されていない」とし、より詳細な研究が必要との見解を示した。そのうえで「まれに発生する有害事象は新型コロナに感染して死亡するリスクと比較して評価されなければならない」と指摘した。

EMAが副反応の可能性があるとの調査結果を公表したことを受け、欧州ではアストラゼネカ製ワクチンの接種対象を50~60代以上などとする動きが広がっている。スペインとイタリアは7日、同ワクチンの接種対象を原則として60歳以上とする方針を発表。ベルギーも同日、55歳以下への接種を停止する方針を決めた。さらにオーストリアも8日、50歳未満にはアストラゼネカよりファイザー製が望ましいとの見解を示した。

アストラゼネカのワクチンをめぐっては、すでにドイツとオランダが60歳未満、フランスも55歳未満への接種を停止している。また、アストラゼネカとワクチンを共同開発した英オックスフォード大学は6日、2月に開始した6~17歳の300人を対象とする治験を中断したと発表した。

EMAがJ&J ワクチンの調査開始

一方、EMAは9日、米製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の新型コロナワクチン接種後に血栓症を発症した事例が報告されたことを受け、調査を開始したと明らかにした。

 EMAによると、J&Jのワクチン接種後に血小板の減少を伴う血栓が生じた深刻な事例が4件報告された。3件は米国での接種後に発生し、1人が死亡した。残り1件は治験段階で発生した。接種との因果関係は「現時点でははっきりしていない」と説明している。

J&Jはワクチンと関連している可能性がある血栓症の報告については認識しているとしたうえで、「現時点で明白な因果関係は確認されていない」とする声明を発表。EMAと連携してデータを検証し、情報提供に努めると強調した。

現時点でJ&J製ワクチンが使用されているのは米国のみだが、欧州委員会は3月にEU域内での販売を承認している。アストラゼネカと同じタイプのウイルスベクターワクチンだが、J&J製は1回の接種で済むため、集団免疫の獲得に向けて接種を加速させるうえで期待が高まっている。