欧州委が有機農業促進の行動計画発表、30年までに域内農地の25%に

欧州委員会は25日、有機農産物の生産と消費を促進し、2030年までにEU域内の農地面積の25%を有機農業にするとの目標を実現するための行動計画を発表した。消費者の信頼を得ながら有機農産物の需要を高めて域内での生産を増やし、持続可能な資源管理や生物多様性の保全にも配慮しながら有機農業の地位を確立する。

化学肥料や合成肥料、遺伝子組み換え作物を使用しない有機農地はEU域内で過去10年間に60%以上拡大し、現在は農地面積全体の約9%を占めている。今回の行動計画は有機農地の拡大傾向を加速させ、有機農産物の需要を喚起するための具体策をまとめたもの。農業部門はEU域内の温室効果ガス排出量の約10%を占めており、欧州委は50年までに域内における温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標の達成に貢献すると指摘。さらに農薬によるミツバチの失跡や大量死といった危害の防止や、生物多様性の保全にもつながると説明している。

具体的には有機農産物の販売促進のため、21年に4,900万ユーロを投じてEU内外で消費者に正確な情報を提供し、需要を喚起するためのイベントやキャンペーンなどを展開する。これはEU産の農産物を内外で販売促進するための年間予算の27%に相当する。また、改革が進められている共通農業政策(CAP)に基づく農業補助金プログラムの枠組みで、23~27年にかけて持続可能な食料システムへの移行を目的とする「エコスキーム」に380億~580億ユーロを投じ、土壌の改善や水資源の保護、総合的病害虫・雑草管理などと並んで有機農業を支援する。

欧州委はこのほか、農薬に対する軽減税率を撤廃するなどの措置により、一般的な農産物と比べて割高な有機農産物の価格を抑えることが可能と指摘している。また、EUでは食品の公共調達で持続可能性の要件を盛り込むことを検討しており、将来的に学校給食や公的機関の食堂などに有機食品が組み込まれる可能性もある。

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