ECBが量的緩和継続を決定、縮小は「時期尚早」

欧州中央銀行(ECB)は22日に開いた定例政策理事会で、コロナ禍を受けて実施している金融緩和策の維持を決めた。景気回復の期待が高まり、物価も上昇しているが、緩和縮小は時期尚早と判断。ラガルド総裁は大規模な量的金融緩和を継続する意向を表明した。

ECBは今回の理事会で、主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.5%に据え置くことを決定した。コロナ禍対応として実施している「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」に基づく資産購入のペースを維持することも確認した。

国債、社債などの資産を買い入れるPEPP は金融緩和の柱となるもの。ECBが新型コロナウイルスの感染拡大で揺れるユーロ圏経済を下支えするため、2020年3月に導入した。当初の資産購入枠は7,500億ユーロだったが、1兆8,500億ユーロまで拡大され、実施期限も21年6月末から22年3月末まで延長することが決まっている。

ECBは前回(3月)の理事会で、PEPPによる資産購入のペースを4~6月期に加速させることを決めたばかり。今回の理事会では同方針の見直しは協議されなかった。

ユーロ圏は20年に6.6%のマイナス成長となり、21年1~3月期もマイナスとなったのは確実だ。ただ、遅れていたEUでの新型コロナワクチン接種が、このところ多くの国で加速しており、コロナ禍収束の道が見えてきた。経済・社会活動の制限も緩和に向かう見通しだ。

低迷していた消費者物価も持ち直しつつあり、4月のインフレ率は前月を0.4ポイント上回る前年同月比1.3%と、コロナ禍が深刻化してから最高の水準に達した。年内にECBが目標とする2%に達する可能性もある。このため、市場ではECBが金融政策の正常化に向けて、量的緩和縮小に転じるとの見方が出始めている。

しかし、ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏は景気回復が進み、4~6月期にプラス成長になるとの見通しを示しながらも、感染力が高い変異ウイルスの流行など景気の下振れリスクがあると指摘。物価上昇に関しても原油価格の上昇など一時的要因が大きく、基調はなお弱いとの見方を示した。

これらを踏まえて、同総裁はユーロ圏経済がECBの金融緩和と各国の財政措置という「松葉づえ」に依然として頼っており、資産購入の縮小を検討するのは「時期尚早」として、当面は現行の金融政策を維持する必要性を強調した。

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