欧州委員会は22日、米グーグルがオンライン広告事業をめぐりEU競争法に違反した疑いがあるとして、本格調査を開始したと発表した。オンライン広告分野における優位な立場を利用し、競合他社がユーザー情報にアクセスするのを制限するなどして公正な競争を阻害したとの見方を強めている。違反が認定されれば巨額の制裁金が科される恐れがある。
広告事業はグーグルにとって経営の柱で、広告配信のしくみや広告枠の販売、広告出稿の仲介など、デジタル広告全般に強い影響力を持っている。同社は2020年にオンライン広告事業で1,470億ドル(約16兆3,000億円)の売上高を計上した。
欧州委はグーグルがサイト閲覧者のデータを自社サービスに利用する一方、競合する広告会社や広告主には閲覧データへのアクセスを制限している可能性があると指摘。また、広告出稿に際して自社の広告技術を優遇し、広告主や媒体社に不利益をもたらしているとの疑いを強めている。
欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は「グーグルはオンライン広告のサプライチェーンのほぼ全ての段階に関わっており、競合するオンライン広告サービスとの競争を困難にしているのではないかと懸念している。グーグルのユーザー追跡のポリシーについても調査する」と述べた。
グーグルのオンライン広告事業をめぐっては、ネット検索広告に関する反競争的行為があったとして、欧州委は19年に同社に対し14億9,000万ユーロの制裁金を科した。また、フランスの規制当局も今月7日、グーグルがオンライン広告事業で自社のサービスを優遇し、競争を阻害したとして2億2,000万ユーロの制裁金を科している。