欧州委員会は6月29日、英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)とスペインのイベリア航空などの親会社である英インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)がスペインのエア・ヨーロッパを買収する計画について、競争上の懸念があるとして、本格的な調査を開始したと発表した。スペイン航空大手2社の統合によって国内、国際線の健全な競争が損なわれる恐れがあると判断し、買収の可否を精査する。
エア・ヨーロッパはマドリードを拠点に、中南米・カリブ海諸国への長距離路線、国内線欧州線を運航している。IAGは19年11月に10億ユーロでの買収で合意し、20年下期に買収手続きを完了する予定だった。しかし、コロナ禍に伴う渡航制限で大打撃を受け、資金難に陥ったことから再交渉を進め、買収価格を半額の5億ユーロに引き下げることで21年1月に合意していた。
IAGはスペインでイベリア航空、格安航空会社(LCC)のブエリング航空を運営しており、同国最大の定期便運航会社となっている。欧州委は初期調査の結果、同3位のエア・ヨーロッパを買収すると、国内線やスペインと欧州各地、米国・中南米を結ぶ路線の寡占進み、運賃値上げやサービスの質の低下を招く恐れがあると判断。両社が競争上の是正策を示さなかったことから、改めて詳細に審査することを決めた。11月5日までに合併の可否を最終判断する予定だ。
欧州委はコロナ禍の影響で航空会社が厳しい状況に置かれているものの、健全な競争環境を維持することが重要だとして、同買収が競争に及ぼす影響を厳しくチェックするとしている。