欧州委員会は9日、固定電話の小売アクセス市場と卸発信市場の規制を撤廃すると発表した。携帯電話の普及や新興系通信事業者の台頭など、固定電話市場をめぐる環境が変化していることを受け、規制緩和を加速させる。
欧州委は、携帯電話やIP電話の普及拡大やOTT(オーバー・ザ・トップ)のような代替プロバイダーの登場によって、固定電話の需要は減少していると指摘。さらに、固定電話を利用する消費者は、伝統的な固定電話網のほかにも光ファイバーやケーブル、ローカルループ・アンバンドリング(LLU)を通じた音声通話サービスなど、多様なプラットフォームの選択肢があり、固定電話市場の競争は促進されていると説明。クルース委員(デジタルアジェンダ担当)は今回の規制撤廃は、「電気通信市場における競争が進んだ結果であり、欧州大陸の接続(Connected Continent)に向けて一歩近づいた」と述べた。
各国の通信規制当局は、固定電話市場で十分な競争が確保されていないと判断した場合には、欧州委の承認を得て規制を維持することができる。例えばドイツの当局は7月、固定電話サービスの価格規制を継続する方針を示している。
規制の撤廃により、スペインのテレフォニカやフランスのオレンジなどの固定系旧独占事業者は、加入者の通話料金や新興系通信事業者の回線使用料を自由に設定できるようになる。一方で、自社で通信回線網を持たない新興系通信事業者の経営が圧迫されたり、固定電話サービス価格の上昇によってエンドユーザーの負担が増加するといった懸念が指摘されている。