欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/13

EU産業・貿易

EUが対米FTAの交渉方針を公表、透明性高め支持拡大図る

この記事の要約

EU閣僚理事会は9日、米国との自由貿易協定(FTA)の交渉方針を公表した。交渉方針は昨年6月に作成されたもので、加盟国から交渉権限を付与された欧州委員会はこれに基づき、米国との間で昨年7月からこれまでに7回の交渉を行って […]

EU閣僚理事会は9日、米国との自由貿易協定(FTA)の交渉方針を公表した。交渉方針は昨年6月に作成されたもので、加盟国から交渉権限を付与された欧州委員会はこれに基づき、米国との間で昨年7月からこれまでに7回の交渉を行っている。通常、通商協定の交渉方針は非公開だが、EU内では環境や食品安全、投資保護などの分野でFTAに反対する意見が根強く、交渉の透明性を問題視する向きもあることから、協定への支持拡大を図るうえで広く情報を開示する必要があると判断した。

公表された交渉方針は18ページからなり、大部分はすでに主要メディアが報じた内容と同じだった。EU議長国イタリアのカレンダ経済振興副大臣は「EU加盟国が議長国の提案を受け入れて、交渉方針の公表に踏み切ったことに満足している」とコメント。また、欧州委のデフフト委員(通商担当)は声明で「米国との交渉プロセスの透明性が高まり、EUが目指している協定の内容をすべての人が正確に理解できるようになる。つまり、環境、健康、安全、消費者保護、個人情報など幅広い分野で高いレベルの保護を維持しながら、欧州全体の経済成長と雇用創出を実現するという目標についてだ」と強調した。

対米FTAをめぐっては、消費者団体は環境保護団体などを中心に、食品安全、農業、環境分野などでEUが大幅な譲歩を迫られるとの懸念が高まっている。また、ドイツなどは投資家保護を目的とするISDS(投資家対国家の紛争解決)条項を協定に盛り込むことに難色を示しており、11月に発足する欧州委員会の新体制で通商担当委員に指名されているマルムストロム現内務担当委員は9月末に開かれた欧州議会の公聴会で、条件によっては「同条項を除外する可能性を排除しない」と発言している。