欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/13

EU産業・貿易

欧州委、証券化市場活性化へ新ルール発表

この記事の要約

欧州委員会は10日、証券化市場の活性化に向けた新ルールを発表した。証券化商品の保有に関する資本要件や流動性バッファー基準の緩和を通じて市場の流動性を高め、長期的な資金調達を可能にしてEU経済の成長を促すのが狙い。 EU市 […]

欧州委員会は10日、証券化市場の活性化に向けた新ルールを発表した。証券化商品の保有に関する資本要件や流動性バッファー基準の緩和を通じて市場の流動性を高め、長期的な資金調達を可能にしてEU経済の成長を促すのが狙い。

EU市場では銀行融資が調達資金全体の約3分の2を占め、この割合は米国の約2倍に上る。しかし、金融危機の影響で現在も銀行による貸し渋りが続いており、とりわけ中小企業にとって債権の証券化が有望な資金調達手段となる。欧州中央銀行(ECB)は低インフレの長期化懸念に対応するため、資産購入による量的緩和策を検討しているが、サブプライムローンなどが金融危機の直接の原因となったことで、資産担保証券(ABS)をはじめとする欧州の証券化市場は縮小傾向が続いている。このためECBや英中銀イングランド銀行は、証券化商品を売買する銀行や保険会社に対する資本要件の緩和が市場を活性化するうえで不可欠との見方を示していた。

欧州委が今回発表した新ルールは、保険会社の健全性に関するソルベンシーⅡ指令および銀行の自己資本を規制する資本要求規則の委任法令で構成される。2016年1月から施行されるソルベンシーⅡ指令の委任法令は、保険会社が保有する高品質の証券化商品に対して優遇的な取り扱いを認めている。これにより、保険会社に安全で簡素かつ透明性の高い欧州の証券化市場に資金を投入するインセンティブを与え、市場の発展と流動性の向上を図る。ここで言う高品質の証券化商品とは、簡素かつ最高評価を得ているABSを指し、債務担保証券などの複雑な商品は含まれない。

18年1月までに導入される資本要求規則の委任法令では、銀行の流動性に関する基準の算定根拠となる流動資産に、国際銀行資本規制バーゼルⅢが認めている住宅ローン担保証券(RMBS)以外に自動車ローンや消費者ローン、中小企業ローン債権を対象としたABSを算入することを認めている。ただし、算入が認められるためには極めて信頼性の高い資産の裏付けがあり、1億ユーロ以上の規模があることが条件となる。さらに、ABSよりも安全性が高いとされるカバード債の流動性バッファーへの算入上限がバーゼルⅢを上回る水準に引き上げられた。

ECBのコンスタンシオ副総裁によると、ECBによる購入の対象となり得るABSとカバード債は1兆ユーロ程度あるという。欧州委のバルニエ委員(域内市場・サービス担当)は新ルールについて、「特に安全で透明性の高い証券化の促進と長期投資を奨励することによって、経済をサポートする枠組み作りに真剣に取り組む欧州の姿勢を明らかにするものだ」と述べた。