ドイツの新政権樹立に向けた動きが大きく前進した。次期政権のキングメーカーとなった緑の党と自由民主党(FDP)は6日、第一党の社会民主党(SPD)と連立交渉を行う方針をそれぞれ表明した。小さな政府を掲げるFDPは政策方針が近い第二党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)との連立実現を視野に選挙戦を展開してきたが、選挙で大敗したCDU/CSUが混乱し、安定した連立交渉を行えない懸念が強まっていることから、SPDと交渉することにした。
9月下旬に行われた連邦議会選挙ではSPDが25.7%、CDU/CSUが24.1%を獲得した。両党とも緑の党、FDPの2党と連立を組み、与党第一党として次期政権を樹立したい考えのため、緑の党とFDPはキングメーカーの地位を手に入れた格好となっている。
両党はこの強みを踏まえ、連立交渉で共同歩調を取ることを取り決め、SPD、CDU/CSUとそれぞれ会談を実施。その感触を踏まえ今回、SPDと連立交渉することを決定した。
CDU/CSUはアーミン・ラシェット首相候補(CDU党首)の人気急落が響き、得票率で同党史上最低を記録した。これを受け党内ではラシェット氏の責任や世代交代を求める声が噴出。党が一体となって連立交渉を行うのは難しい状況にある。FDPと緑の党が同党とそれぞれ行った会談の内容が守秘義務に反してCDU/CSUの会議参加者からメディアにリークされたことは、そうした状況を反映したものと受け止められている。FDPのクリスティアン・リントナー党首は6日の記者会見で、「同盟(CDU/CSU)の政権に就く意思と一体性が社会的に議論されている」と不信感を示した。
ただ、CDU/CSU、FDP、緑の党の3党による政権樹立の可能性が完全に潰えたわけではない。SPDと緑の党、FDPの政権交渉は難航が予想されるためで、決裂した場合、FDPと緑の党はCDU/CSUと交渉する見通しだ。緑の党のロベルト・ハーベック共同党首は、SPDとの交渉を決めたことは「(CDU/CSU、緑の党、FDPの3党からなる)ジャマイカ政権の全面拒否ではない」と明言した。