欧州委員会は13日、北極圏をめぐる新たな戦略を発表し、EUとして同地域への関与を深め、石油や天然ガスなど化石燃料の開発を停止する方針を表明した。北極圏での資源開発や燃料の購入を禁止する国際的な法的枠組みも提唱する。豊富な天然資源を擁する北極圏では米露中などが影響力を強めており、持続可能な発展や環境保護の観点からEU主導で多国間や地域との協力関係の構築を目指す。
EUは新戦略で、北極圏では他の地域に比べて2倍以上の速度で気温が上昇しており、同地域の温暖化によって地球全体に海面上昇などの影響が及ぶと指摘。温暖化防止の観点からEUは「北極圏の石油、石炭、天然ガスを地中に留めておくことを約束する」と明言し、化石燃料の新規開発を停止すると表明。さらにこうした取り組みを世界に広げ、資源開発や同地域で生産された燃料の取引を国際的に禁止するよう働きかける方針を示した。
一方、レアアース(希土類)など戦略的に重要な鉱物資源に関しては、地域と協力して環境に配慮した形での採掘を推進する。調達先を多様化して中国依存を低減する狙いがある。
また、デンマーク領グリーンランドにEUの新たな事務所を開設し、北極圏への影響力拡大を図る。
欧州委のシンケビチュウス委員(環境・海洋・漁業担当)は、北極圏でのロシアによる軍備増強や中国のインフラ投資などを念頭に、「北極圏への関心の高まりから地政学的な競争が拡大し、気候変動が進んでいる」と指摘。国際社会による対応の必要性を訴えた。