仏が産業再興へ300億ユーロの投資計画、小型原子炉開発など柱

フランスのマクロン大統領は12日、国内産業の再興と競争力強化に向けた2030年までの投資計画「フランス 2030」を発表した。原子力や水素エネルギー、次世代航空機、生物医学などの分野に300億ユーロ(約4兆円)を投じ、イノベーションを促進すると同時に産業の脱炭素化を図る。

マクロン氏は演説で、米国や中国などとの競争が激しさを増す中、国内産業の再興を図り、フランス経済の成長を促すことが投資計画の目的と説明。「ヨーロッパ人、特にわれわれフランス人が自分たちの未来を選択できるようにしたいと考えるなら、独立性とより良い生活環境を求める戦いに勝利することが重要だ」と強調した。

300億ユーロのうち、原子力や水素など温室効果ガス排出削減に貢献するエネルギー技術の開発に80億ユーロを投じる。原子力分野には10億ユーロを投資し、30年までに複数の小型モジュール原子炉(SMR)を導入する。SMRは従来の原発より発電規模が小さく、冷却しやすいことから安全性が高いとされる。建設費用も抑えられる。

フランスは電力需要の70%を原発に依存している。東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、欧州で脱原発の動きが広がる中、オランド前政権は15年、原発依存度を25年までに50%まで引き下げる目標を法制化した。マクロン氏は18年、電力の安定供給を確保するため原発稼働を継続すると表明。依存度50%の目標は維持したまま、達成期限を35年に設定し直し、国内に58基ある原子炉のうち14基を同年までに廃炉にする方針を打ち出した経緯がある。

水素戦略に関しては、温室効果ガスを排出しない再生エネルギーを利用して製造する「グリーン水素」の分野で先頭に立つ目標を掲げ、30年までに少なくとも国内2カ所に大規模な製造施設をつくる計画を明らかにした。

このほか輸送部門に40億ユーロを投じ、電気自動車とハイブリッド車の生産台数を200万台に引き上げるとともに、30年までに低炭素航空機の製造を開始する。また、宇宙分野では26年までに再利用可能な発射システムの開発を目指す。さらに医療分野ではバイオ医薬品や次世代医療機器の開発を推進する。