フランスを本拠とする欧州の多国籍取引所ユーロネクストは8日、ロンドン証券取引所(LSE)グループと結んでいる株式、デリバティブ(金融派生商品)、商品取引の清算委託契約を2023年末に打ち切ると発表した。買収したイタリア取引所の清算機関CC&Gに同業務を移管する。
ユーロネクストは同取引の大半をLSEの清算部門であるLCHが仏パリで運営する拠点に委託していた。しかし、LSE傘下のイタリア取引所を買収したことから、LCHに依存する必要がなくなった。
LSEは19年、金融情報やリスク管理などのサービスを提供するリフィニティブを買収すると発表した。しかし、LSEとリフィニティブが欧州の国債の電子取引で大手となっていることから、EUの欧州委員会が承認に難色を示したため、是正策として伊国債を中心とする債券の電子取引システムを運営するMTSを持つイタリア取引所の売却を決定。4月にユーロネクストが買収していた。
ユーロネクストは2027年が期限だったLCHとの契約を途中で打ち切り、24年からグループ内での清算に切り替える。LCHには違約金を支払う。
ロンドンは英国のEU離脱によって欧州の金融ハブとしての地位が低下しており、オランダのアムステルダムがロンドンに代わる欧州の株式売買の中心地となっている。企業などが相場変動のリスク回避などに利用しているユーロ建てデリバティブ取引の決済も、LSEグループのLCHクリアネット、ロンドンのICEクリア・ヨーロッパが圧倒的なシェアを握ってきたが、22年7月からは英国に拠点を置く清算機関がEU域内の顧客向けのデリバティブ取引決済業務を行えなくなる。
フランス、イタリア、オランダなど欧州7カ国で証券取引所を運営するユーロネクストが清算をイタリアに移管することで、金融の脱ロンドンが一層加速する。