欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/10/20

EU産業・貿易

加盟国が17年までの口座情報共有で合意、オーストリアに1年の猶予期間

この記事の要約

EU加盟国は14日に開いた財務相理事会で、各国の税務当局が銀行の口座情報を共有する制度を導入することで合意した。国境を越えた租税回避対策の一環で、当局が国外の銀行口座を利用した課税逃れの実態を把握しやすくし、税収増につな […]

EU加盟国は14日に開いた財務相理事会で、各国の税務当局が銀行の口座情報を共有する制度を導入することで合意した。国境を越えた租税回避対策の一環で、当局が国外の銀行口座を利用した課税逃れの実態を把握しやすくし、税収増につなげるのが狙い。2017年までに当局間で自動的に口座情報を交換できるシステムを構築する。

債務危機を受けた緊縮財政が続くなか、EU内では脱税や租税回避で年間1兆ユーロ規模の税収が失われているとみられている。加盟国は脱税対策を強化する必要があるとの認識で一致しているものの、伝統的に銀行の守秘義務を重視してきたルクセンブルクとオーストリアが口座情報の自動交換に難色を示し、調整が難航していた。

両国は最終的に、口座情報の自動交換制度を国際的な枠組みにするため、スイスやリヒテンシュタインなど周辺国と交渉を進めることを前提に、同制度の導入に合意した。ただし、オーストリアは銀行と当局の間で口座情報を共有するためのシステムをゼロから構築しなければならないとして、追加で1年間の猶予を要求。他の加盟国はこの条件を受け入れ、同国については導入期限を18年とすることで合意が成立した。

今回の合意により、EUでは経済協力開発機構(OECD)が17年の施行を目指している税に関する情報交換のための国際的な報告基準に沿って、配当金やキャピタルゲインをはじめとするあらゆる金融収益、口座残高などの情報が当局間で自動的に共有されることになる。

欧州委員会のシュメタ委員(税制・関税同盟・会計検査・不正対策担当)は「新たな措置により、欧州では完全かつ永続的に税の透明性が確保される。銀行の秘密主義はもはや機能しない」とコメントしている。