11月のユーロ圏インフレ率は4.9%、エネルギー価格高騰などで過去最高に

ユーロ圏の物価急上昇に歯止めがかからない。EU統計局ユーロスタットが11月30日に発表したユーロ圏の同月のインフレ率(速報値)は前年同月比4.9%となり、前月の4.1%から大幅に拡大。過去最高を更新した。(表参照)

物価上昇が続く最大の要因はエネルギー価格の高騰。同価格の上昇率は27.4%で、前月の23.7%を大きく上回った。サプライチェーンの混乱による半導体など生産資材の値上がりも影響しており、工業製品、サービスの上昇率も前月から拡大。欧州中央銀行(ECB)が重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)は2.6%となり、前月の2.0%から跳ね上がった。

主要国ではドイツが前月を1.4ポイント上回る6.0%と、1992年以来の高水準に達した。フランスは3.4%、イタリアは4.0%、スペインは5.6%。フランスとスペインは0.2ポイント、イタリアは0.8ポイントの幅で前月を上回った。

ユーロ圏のインフレ率は7月から、ECBが目標とする2.0%を超過。上昇は加速している。ECBのデギンドス副総裁は仏メディアとのインタビューで、サプライチェーン混乱が長期化し、物価急上昇が落ち着く時期が当初の予想よりずれ込むとの見通しを示した。

11月のインフレ率が市場予測の4.5%を大きく超えたことで、景気下支えを優先してきたECBに物価急上昇への対応を促す圧力が一層強まっている。ECBは10月の定例政策理事会で、インフレ高進は一時的とする見方を変えず、ラガルド総裁は早期の利上げを否定していた。12月16日に開く次回の理事会でどのような方針を打ち出すかが注目される。

ただ、市場ではECBが基本的なスタンスを維持し、量的金融緩和策の柱となっている「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる国債、社債などの資産を買い入れる措置を予定通り終了する一方で、コロナ禍前から実施している資産購入プログラム(APP)の拡充を決めるとの見方が多い。

上部へスクロール