欧州委員会は2日、欧州の大手銀行が外国為替取引でカルテルを結び、EU競争法に違反したとして、英HSBCホールディングスなど4行に計3億4,400万ユーロ(約440億円)の制裁金を科すと発表した。
制裁の対象となったのは、HSBCとクレディ・スイス、英バークレイズ、英ナットウエスト・グループ(旧RBS)。制裁額はHSBCが1億7,430万ユーロ、クレディ・スイスが8,330万ユーロ、バークレイズが5,430万ユーロ、ナットウエストが3,250万ユーロとなっている。
クレディ・スイス以外はカルテルの事実を認めて欧州委と和解し、それぞれ制裁金が減額された。また、スイスのUBSもカルテルに参加していたが、最初に欧州委に通報して調査に協力したことから制裁金を全額免除された。
欧州委によると、UBSを含む5行はユーロ、ポンド、米ドル、円、スイスフランなど11通貨の取引をめぐり、カルテルを形成。「スターリング・ラッズ」と呼ばれるチャットルームで顧客の注文や取引計画などの機密情報を交換し、それらの情報をもとに通貨取引を行っていた。各行のトレーダーは互いの利益のために売買のタイミングを調整し、他行の取引の妨げにならないよう、一時的に注文を控えるなどの行為もあったとされる。
欧州委のベステアー上級副委員長(競争政策担当)は声明で「外国為替のスポット取引は最も大きな金融市場の1つだ。5行のカルテル行為は欧州の経済と消費者を犠牲にし、金融部門の健全性を損なった」と厳しく非難した。
2013年に外為市場における大規模な不正行為が発覚して以来、欧米の規制当局は総額で110億ドル(約1兆2,400億円)を超える制裁金を大手行に科してきた。欧州委は19年に今回と同様のカルテル行為で、日米欧の5行に計10億7,000万ユーロの制裁金支払いを命じている。