欧州委員会は1日、中東などからの不法移民がベラルーシ経由でEU域内に流入している問題で、同国と国境を接するポーランド、リトアニア、ラトビアに対して難民申請手続きに関するルールの緩和を提案した。一時的に難民申請の登録期間を延長したり、申請の窓口を国境検問所に限定するといった措置を認める。認定手続きの円滑化を図るのが狙いだ。ただ、国境付近での不法移民の収容期間が長期化するため、人権団体などからは非難の声が上がっている。
EUはベラルーシのルカシェンコ政権がイラクやアフガニスタンなどから移民を呼び寄せ、同国に制裁を科すEUへの報復として意図的に移民を送り込んでいると批判している。ベラルーシによるこうした「ハイブリッド攻撃」により、今年に入り少なくとも8,000人の不法移民がEU域内に流入したとされ、ポーランド、リトアニア、ラトビアとベラルーシとの国境付近では夏以降、緊張状態が続いている。
欧州委の提案によると、3カ国は今後6カ月にわたり、難民申請の登録期間を現行の3~10日から最大4週間に延長するとともに、難民申請の受付窓口を国境検問所など指定場所に限定することが認められる。また、申請者を国境地帯の施設に最長16週間収容し、その間に異議申し立てを含む全ての手続きを処理することが可能になる。さらに難民として認定されなかった場合、それぞれの国内手続きを適用して迅速に本国に送還することが認められる。
一連の措置は閣僚理事会と欧州議会の承認を経て導入される。欧州委は定期的に状況を確認し、必要に応じて暫定措置の延長または廃止を提案する。
人権擁護団体のオックスファムは欧州委の提案について、「第三国との国境地帯でEUへの入域を望む移民を不当に拘束し、著しい権利制限を容認することはEUの価値観に反する」と非難した。