北ア通商ルール見直し巡る英との協議、医薬品問題で進展

EUと英国は10日、英政府がEU離脱協定に盛り込まれた「北アイルランド議定書」の大幅な見直しを求めている問題について協議した。依然として双方に大きな溝があり、合意に至らなかったが、英国の代表を務めるフロスト内閣府担当相によると、英本土から北アイルランドへの医薬品供給問題については進展があった。

英領北アイルランドは、EUと英国の離脱協定に盛り込まれた北アイルランド議定書に基づき、EU単一市場と関税同盟に残った。これによってEUの通商ルールが適用される「特区」のような存在となり、英本土から流入する物品については、国内の移動であるにもかかわらずEUの厳しい基準を満たさなければならず、通関・検疫が必要となる。これには医薬品も含まれ、EUの薬事規制が適用される。

フロスト内閣府担当相によると、EU側は今回の協議で、英国の主張に理解を示し、英本土からの医薬品供給が滞らないようにするため、EUの関連規制を見直す用意があることを表明。近く法改正に着手することを明らかにしたという。

北アイルランドは医薬品の大半が英本土の製薬会社、販売会社から供給されている。議定書に定められたルールの導入を暫定的に免除する措置が失効し、厳格に適用されれば、供給が混乱する恐れがあり、英政府はルールの見直しを強く求めていた。

EUの欧州委員会は10月、北アイルランドで導入された通商ルールの見直し案を求める英側に提示した譲歩案で、医薬品問題について対応する方針を打ち出していた。今回の協議では、さらに踏み込んで譲歩を示した格好となる。

英政府は北アイルランドで英本土から流入する物品の通関手続きが必要となったことに伴い、物流混乱の問題が生じているとして、7月に離脱協定のうち、北アイルランドとEU加盟国アイルランドの自由な通商を維持するため設けたルールの大幅な見直しを要求。EUは10月に発表した譲歩案で、通関・検疫手続きを大幅に緩和する方針を示したが、英国側は不満としている。

医薬品問題は決着のめどが立ったが、解決しなければならない課題は多い。双方は年内の合意を目指し、フロスト内閣府担当相と欧州委のシェフチョビチ副委員長が15、17日に集中協議を行う予定だ。

議定書の見直しを巡っては、北アイルランドの通商ルールをめぐる紛争を欧州司法裁判所(ECJ)の管轄とするルールの撤廃を英国側が強く主張しているが、EUは拒否を堅持している。これについて、英フィナンシャル・タイムズなど欧州の一部のメディアは10日、英政府の高官がEUの記者団に対するブリーフィングで、英政府が合意を目指して方針転換し、同問題に固執しないことを明らかにしたと報じた。しかし、政府の報道官は「我が国の立場を正確に表現していない」と述べ、通商紛争に管轄を含む全問題でルール見直しを求める方針に変更はないと明言した。

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