ドイツ連邦銀行(中銀)の次期総裁に元理事のヨアヒム・ナーゲル氏(55)が就任する。クリスティアン・リントナー財務相が20日、明かにした。自己都合で退任するイェンス・ヴァイトマン総裁の後任として1月1日付で就任する予定だ。22日の閣議で指名される。
ナーゲル氏は連銀に計17年勤務した実務派で、2010~16年には理事を務めた。その後、政策金融機関のドイツ復興公庫(KfW)の理事となり、20年に国際決済銀行(BIS)に移った。
金融政策ではヴァイトマン総裁と同じく、ドイツの伝統を受け継ぐタカ派であり、積極的な緩和政策を進める欧州中央銀行(ECB)に対する連銀の批判的な姿勢を継続する見通しだ。リントナー財務相は「インフレリスクの高まりを受け、安定性重視の金融政策の重要性が高まっている」の指摘しており、タカ派路線の継続は政府の意思でもある。
独金融業界はナーゲル氏の指名を歓迎している。独信用協同組合連合会(BVR)のミリヤ・コラーク会長は「安定した国家財政がなければユーロの安定は長期的に不可能だ」と述べ、イタリアなど財政悪化国を底支えしているECBの金融緩和路線が変わることへの期待を表明した。ただ、ECBではタカ派が少数派にとどまるため、ナーゲル氏が連銀総裁に就任してもECBの政策転換は起こらない見通しだ。