欧州議会は15日に開いた本会議で、ユーロ圏の銀行の破綻処理を一元化する法案を賛成多数で可決した。これによって同法案は成立し、新制度が2015年1月から始動することが決定。銀行監督の一元化と合わせたEUの銀行同盟がついに発足する。
銀行同盟創設は、2008年の金融危機で経営難に陥ったユーロ圏の銀行を支えるため、約6,000億ユーロに上る巨額の公的資金注入を迫られた経験を踏まえて、EUが打ち出したもの。金融システムの危機を早期に把握し、迅速に対応を決め、公的資金を使わずに破綻処理を行うことを目的としている。
第1段階として、ユーロ圏の銀行の監督を今年11月から欧州中央銀行(ECB)に一元化することが、すでに決まっている。第2段階の破綻処理一元化によって、ようやく体制が整う。2002年に発足したユーロ圏の金融統合が一気に深まることになる。
「単一破綻処理メカニズム(SRM)」と呼ばれる破綻処理の一元化制度では、ECBの監督対象となる銀行に資金繰りの行き詰まりなどの問題が生じた際に、専任の委員と各国の金融当局者で構成される「破綻処理委員会」が清算するか、救済するかをEUの内閣に当たる欧州委員会に提案。救済の場合は、「単一破綻処理基金」と呼ばれる共通基金を使って資金を注入する。同基金は総額550億ユーロ規模。銀行による拠出を積み立てて運用する。救済に際しては、対象銀行の債権者、大口預金者にまず負担させる「ベイル・イン」と呼ばれるシステムを導入し、これでは不十分な場合に基金を投入することになる。同基金は2016年1月に始動する。
同制度は昨年末の首脳会議で加盟国が合意した。しかし、欧州議会は破綻処理基金について、各国が自国銀行向けに創設した基金を10年間で段階的に統合し、2026年から圏内のあらゆる銀行の破綻処理に使える単一基金とするという案に反発し、完全整備を前倒しするよう要求。破綻処理策を決定する仕組みが複雑で、各国が介入する余地が大きい点も問題視し、修正を求めていた。
加盟国と欧州議会は、5月に議会が改選される前の決着を目指して交渉を進めた結果、基金完全整備の期間を8年に短縮し、創設1年目に基金の40%を共通で使えるようにすることで3月に合意。破綻処理の決定に関しても、破綻処理委がまとめた対応策について、欧州委が救済案を退けて清算を決めるか、救済の場合の基金投入額を変更したケースを除いて、加盟国の承認を不要とする方向に修正した。欧州議会の本会議では、これらが追認され、関連法案が成立した。
欧州議会は同時に、銀行が破たんした場合に保険で保護する個人預金の限度額を10万ユーロに据え置く法案も可決した。これによって、ベイル・イン制度が導入されても、預金が同額以下の小口預金者は負担を迫られない。