欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/5/5

総合 – 欧州経済ニュース

銀行ストレステストの詳細発表、過去最大の難関に

この記事の要約

欧州銀行監督機構(EBA)は4月29日、EUの124銀行を対象に近く実施するストレステスト(健全性審査)の詳細を発表した。向こう2年間の域内総生産(GDP)成長率がマイナスになるというシナリオを設定し、それでも資本不足に […]

欧州銀行監督機構(EBA)は4月29日、EUの124銀行を対象に近く実施するストレステスト(健全性審査)の詳細を発表した。向こう2年間の域内総生産(GDP)成長率がマイナスになるというシナリオを設定し、それでも資本不足に陥らないかどうかをチェックする。銀行はこれまでのテストで最も厳しい条件を突き付けられたことになる。

今回のストレステストでは、欧州委員会の最新経済予測に基づく「基本シナリオ」と、大きな逆風にさらされる場合を想定した「逆境シナリオ」の2つを設定。対象となる銀行の中核的自己資本比率が基本シナリオの下で8%、逆境シナリオ下で5.5%を上回ることが“合格”基準となる。

基本シナリオは、EUのGDPが14年はプラス1.5%、15年は同2%、16年は同1.8%となることを想定。逆境シナリオでは、それぞれマイナス0.7%、同1.5%、プラス0.1%と、基本シナリオを計7ポイントほど下回る状況を想定している。

2011年に実施された前回のストレステストのシナリオ対象期間は向こう2年間と短かった。また、逆境シナリオのGDP成長率も、11年がマイナス0.4%と、マイナスを小幅に設定していた。今回は条件を厳しくしただけでなく、期間を1年伸ばした。さらに、EUで◇国債利回りが14~16年に年1.1ポイント上昇◇14~16年に株価が19.2%、住宅価格が21.2%、商業不動産の価格が14.7%下落◇失業率が16年に13%まで悪化――といったリスクも織り込んだ上で、中核的自己資本比率が5.5%以上となることを求める。

EUは2010年から銀行のストレステストを実施しているが、1回目のテストで合格と判定されたアイルランドの銀行が後に資本不足に陥り、同国がEUと国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請する事態に追い込まれるなど、その結果への信頼性が揺らいでいる。このため、ユーロ圏の銀行監督を欧州中央銀行(ECB)に一元化する制度が始動する11月を前に実施する今回のテストでは、合格基準のハードルを高めに設定。さらに、不良債権などリスク資産の状況を審査する資産査定も並行して実施する。

ただ、金融関係者らの間では、シナリオにはユーロ圏がデフレに突入するリスクが反映されていないと批判する声も出ている。

ストレステストと資産査定の結果は10月に公表の予定。ECBは29日、資産査定または基本シナリオの下で資本不足と判定された銀行は6カ月以内、逆境シナリオ下で同判定を下されたケースでは9カ月以内の資本増強を求める方針を打ち出した。