欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2022/1/31

EU情報

インテルへの巨額制裁に無効判決、欧州委が敗訴

この記事の要約

欧州司法裁判所の一般裁判所(下級審に相当)は26日、米半導体大手インテルがEU競争法に違反したとして欧州委員会が同社に巨額の制裁金を科した問題で、同決定を無効とする判決を下した。EU競争法を厳格に適用し、違反企業に巨額の […]

欧州司法裁判所の一般裁判所(下級審に相当)は26日、米半導体大手インテルがEU競争法に違反したとして欧州委員会が同社に巨額の制裁金を科した問題で、同決定を無効とする判決を下した。EU競争法を厳格に適用し、違反企業に巨額の制裁金を科してきた欧州委にとって大きな痛手となる。

欧州委は2009年、インテルがライバルの米AMDをパソコン用CPU市場から排除する目的で、大手パソコンメーカーに自社製品の採用を求めたり、大手小売りチェーンに自社製プロセサ搭載パソコン以外は販売しないよう求める見返りに、リベートを支払っていたという調査結果をまとめ、こうした行為は市場支配的地位の乱用にあたると認定。1社に対する制裁金としては当時で過去最高となる10億6,000万ユーロの支払いを命じた。

インテルは決定を不服として提訴したが、一般裁判所は14年、欧州委の判断を支持する判決を下した。インテルが上訴した結果、上級審の欧州司法裁判所は17年、リベートが競争を制限した事実はないとするインテルの主張が十分に検証されていないとして、欧州委の決定が妥当だったかを再審理するよう一般裁に命じていた。

一般裁は欧州委の分析が「不完全」で、「リベートが反競争的な結果を招いたことを立証できていない」としてインテルに軍配を上げ、制裁を科した判決を無効とした。欧州委は上訴が可能。欧州委は判決内容を精査して対応を決めるとコメントしている。

EUは米の巨大IT企業による独占的地位を悪用した反競争的行為や税逃れへの警戒を強めており、グーグルやアマゾンなどに巨額の制裁を科した。しかし、アイルランド政府によるアップルへの税優遇措置、ルクセンブルクによるアマゾンへの同様の措置を違法な国家補助と認定し、巨額の追徴課税を命じたことが無効化されるなど、欧州裁に決定を覆されるケースが相次いでいる。

インテルの件でも苦杯を喫したことで、今後の競争法違反をめぐる判断に影響が及ぶ可能性がある。