欧州中央銀行(ECB)は3日に開いた定例政策理事会で、12月に決めた金融政策の維持を決めた。政策金利を据え置いたほか、コロナ禍対応として実施している緊急資産購入プログラムを予定通り3月末に打ち切る。一方、ラガルド総裁は記者会見で、ユーロ圏で物価急上昇が続いていることへの懸念を示し、年内の利上げを否定しなかった。
ECBは12月の理事会で、ユーロ圏で景気回復が続く中、物価が急上昇していることから金融正常化に舵を切り、「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と呼ばれる国債、社債などの資産を買い入れる措置を3月末で終了することを決定。コロナ禍前から実施している資産購入プログラム(APP)に基づく毎月の買い入れは、PEPP打ち切りによる影響を緩和するため、22年4~6月期に現在の200億ユーロから400億ユーロに拡大するが、7~9月期には300億ユーロとし、10月以降は200億ユーロに戻すことも決めた。
今回の理事会では、こうした方針を変更せず、主要政策金利を0%、中銀預金金利をマイナス0.5%に据え置くことも決め、金融緩和の縮小を段階的に進めることを確認した。
大きな変化があったのは物価上昇への反応。これまでは急上昇は一時的として、2022年の利上げを否定していた。しかし、インフレ率は10月から3カ月連続で過去最高を更新し、12月は前年同月比5.1%まで上昇(後続記事参照)。ECBが目標とする2.0%を大きく上回る状況が続いている。
ラガルド総裁は記者会見で、インフレ率が年内に縮小に転じるとの見方は変えなかったものの、「高水準にとどまる状況が予想より長期化する」と述べた上で、「12月時点の予測と比べて、インフレのリスクは上向きだ」として、これまでより強い調子でインフレ高進への警戒感を示した。さらに、年内の利上げについて、繰り返し使っていた「可能性は極めて低い」という発言を控え、可能性を否定しなかった。
ECBは3月に開く次回の理事会で、最新の経済予測に基づいて物価上昇などへの対応を検討する。市場ではラガルド総裁がインフレ警戒のトーンを強めたことで、ECBが方針転換し、年内に複数の利上げに踏み切るとの見方が広がっている。これを受けて同日の外国為替市場はユーロ高・米ドル安に転じた。