原子力・天然ガスは「持続可能」、欧州委が正式認定

欧州委員会は2日、環境問題の解決に貢献する持続可能な経済活動かどうかを仕分ける「EUタクソノミー」をめぐり、一定の条件下で原子力と天然ガスを脱炭素化に貢献するグリーンな投資対象と認定する委任規則の最終案を発表した。両エネルギーに関連した事業を、2050年までに域内の温室効果ガス排出量を「実質ゼロ」にするとのEUの目標達成に貢献する持続可能な経済活動と位置付け、投資を呼び込みやすくする。

委任規則は持続可能な経済活動として認定する際の基準を定めたもので、規則自体は1月1日付で適用が開始されている。約500ページに及ぶ「グリーンリスト」では、風力や太陽光発電所の建設、低排出ガス車の生産、エネルギー効率化のためのシステム開発など、幅広い事業がグリーン投資の対象として分類されているが、加盟国間で意見が分かれる天然ガスと原子力ついては結論を先送りしていた。

最終案によると、原子力については2045年までに新規の建設認可を得るか、40年までに運転延長の認可を得ることを前提に、50年までに高レベル放射性廃棄物の最終処理施設について具体的な計画を策定するなどの要件を満たした場合に持続可能と認定する。天然ガスに関しては、30年末までに建設認可を受けた発電施設の場合、温室効果ガス排出量が二酸化炭素(CO2)換算で1キロワット時(kWh)あたり270グラム未満で、35年末までに再生可能または低炭素ガスに完全に切り替えることなどが要件となる。

原子力を持続可能と認定する案をめぐっては、原発推進派のフランスや東欧諸国が支持する一方、22年の脱原発を掲げるドイツやオーストリアなどが強く反対。天然ガスについてはドイツや東欧諸国が支持する一方、オランダやスウェーデン、デンマークなどが認定に難色を示している。

これに対して欧州委は、原子力と天然ガスは再生可能エネルギーがベースとなる将来への移行を促進するための「暫定的なエネルギー」であり、持続可能との認定は「移行期における一時的な位置付け」である点を強調している。

しかし、オーストリアとルクセンブルクは2日、原発を条件付きでグリーンリストに加えることに強く反対し、欧州委を欧州司法裁判所に提訴する方針を表明した。オーストリアのゲウェッスラー環境相はツイッターへの投稿で「原発はコストがかかり危険なうえ、気候変動目標の達成に貢献しない」と批判。ルクセンブルクのトゥルメスエネルギー相も欧州委の提案は容認できないとして、オーストリアとともに提訴する姿勢を示した。

今後のプロセスとしては、閣僚理事会と欧州議会で最大6カ月かけて委任規則の最終案について協議し、否決されなければ適用が開始される。否決するには閣僚理では少なくとも20カ国、欧州議会では過半数の反対が必要となる。

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