ボーダフォン、仏社の伊事業買収提案を拒否

携帯電話サービス大手の英ボーダフォンは10日、仏同業イリアッドからイタリア事業買収の提案を受けたが、拒否したことを明らかにした。イリアッドは買収が実現すれば、伊携帯電話サービス市場で首位となるはずだったが、ボーダフォンは「株主の最善の利益にならない」として応じなかった。

英フィナンシャル・タイムズなど一部のメディアは9日、イリアッドがボーダフォンに伊事業買収を提案したと報じていた。ボーダフォンは報道内容を確認した上で、拒否を表明した。

イリアッドは2012年にフランスで携帯電話サービス事業を開始した新興企業。低価格を武器に急成長しており、イタリア市場には18年に参入した。同社は英投資会社エイパックス・パートナーズと共同で、5日に同買収を提案したとされる。イリアッドは10日、提示した買収額が112億5,000万ユーロだったことを明らかにした。

同社は伊4位の携帯電話サービス会社。同国でも低価格戦略を展開し、短期間で10%近いシェアを確保した。約28%のシェアを持つボーダフォンの伊子会社を買収すれば、シェアが36%程度まで拡大し、最大手のテレコムイタリアを抜いて首位に躍り出る。

ボーダフォンは一部の株主から、多くの事業者が参入し、競争が激化している欧州市場で他社と統合し、事業基盤を強化するよう圧力を受けていた。このケースにイタリアは合致するが、イリアッドの提案には乗らなかった。アナリストらの間では、受け入れれば市場破壊者のイリアッドに屈した形となるため、悪い先例を作るのを避けたといった見方が出ている。

イリアッドは十分な金額を提示したとして、買収額を上乗せせず、同取引を断念する意向を表明。今後もイタリア市場で「独立戦略を続行する」とコメントした。

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