ウクライナへのロシア軍の侵攻を受けて、ドイツ企業が同国事業を見合わせ始めた。石膏製造のクナウフは同国東南のドンバス地方にある工場の操業を停止。流通大手のメトロも同国で展開する店舗26カ所のうち約半数で営業を見合わせているもようだ。
独ハンブルク港運営会社HHLAは黒海に面するウクライナ南部のオデッサ港に保有するターミナルCTOの営業を停止した。CTOは同国最大のターミナルで、昨年のコンテナ取扱量は65万TEU(20フィートコンテナ換算)。現地従業員480人に1カ月分の給与を前払いし、自宅待機を指示した。ターミナルには監視要員8人を残している。
HHLAの役員はヴェルト紙に、ターミナルは重要インフラであるため、サイバー攻撃を受ける恐れがあると述べた。CTOは穀物輸出と消費財輸入の窓口であることから、閉鎖が長期化すると穀物市場や生活物資の国内供給に影響が出る恐れがある。HHLAのアンゲラ・ティッツラート社長は、同ターミナルで業務を再開できるのかどうか、再開できるとすればいつになるのかは「分からない」としている。
HHLAによると、中国と西欧を結ぶ鉄道物流も現在、停止されている。また、サンクトペテルブルグ港などバルト海東部にあるロシアの港湾とハンブルク港と結ぶ路線は制限が強まる公算が高いという。
ドイツの物流企業はウクライナからの輸送を停止した。独運送・物流全国連盟(DSLV)のフランク・フスター専務理事は、現地事業を展開する会員企業に対しトラックや鉄道で荷物を同国に運ぶことも同国から国外に輸送することも控えるよう呼びかけたことを明らかにした。