ベルギーが原発稼働期間を10年延長、ウクライナ危機で脱原発先送り

ベルギー政府は18日、2025年までに国内の原子力発電所を全て閉鎖する計画を見直し、7基ある原子炉のうち2基の稼働期間を10年間延長する方針を決定した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシア産天然ガスや石油に依存する現状から早期に脱却する狙い。原発の活用で電力の安定供給を確保し、エネルギー価格の高騰による家計や企業の負担増を抑える。

ベルギーには北部アントワープ近郊のドール原発に4基、南部リエージュ州のティアンジュ原発に3基の原子炉がある。このうち稼働期間を延長するのは、ドールの4号機とティアンジュの3号機。いずれも1985年に運転を開始し、発電容量は100万キロワットを超える。

デクロー首相は記者会見でウクライナ危機に触れ、「不確実性が高まる時代において、安定的に電力供給を確保するための確実性を重視した」と説明。「地政学的な状況を踏まえて化石燃料への依存から脱却する必要があり、今回の決定で大きく前進することができる」と稼働延長の意義を強調した。

ベルギー政府は03年、25年までの脱原発を掲げて関連法を施行。代替電源の確保が遅れて実現が危ぶまれていたが、連立政権を構成する7党は昨年12月、計画通りに全ての原子炉を段階的に閉鎖し、45年までに廃炉を完了することで合意した。しかし、気候変動対策とともにエネルギー分野におけるロシア依存からの脱却が急務となるなか、原発の稼働延長が必要と判断した。

ベルギー国内の原子炉を運営する仏電力大手エンジーは政府の決定を受け、「安全性や規則、実施面から」早急に計画の実現可能性を検討すると表明した。同社は声明で「原子炉の稼働延長は予測不可能な事態であり、事業規模からして計画に伴うリスクは民間企業の通常の活動を超えるものだ」と指摘した。

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