域外国の補助金に対する規則案、欧州議会の国際貿易委が修正案採択

欧州議会の国際貿易委員会は4月25日、域外国政府から補助金などの支援を受けた企業によるEU企業の買収や公共調達での受注に対処する規則案を全会一致で採択した。EU市場で影響力を強める中国を念頭に置いたもので、一定規模以上の買収や公共調達への入札について事前通知を求める内容。欧州委員会が健全な競争を歪めると判断した場合、取引を差し止めることも可能になる。規則案は近く欧州議会本会議で採択される見通しで、その後、最終合意に向けて閣僚理事会との交渉に入る。

規則案によると、域外国政府から5,000万ユーロ相当を超える補助金を受けた企業が、売上高4億ユーロ以上のEU企業を買収する際、補助金について欧州委に予め通知することを義務付ける。取引額が2億ユーロを超える公共調達に参加する場合も同様の義務を課す。事前通知を義務付ける基準について、欧州委の原案では買収ターゲットの売上高が5億ユーロ以上、公共調達の規模は2億5,000万ユーロとなっていたが、国際貿易委では条件を厳格化した修正案が支持された。

域外国政府による補助金には直接補助だけでなく、低利融資や税制上の優遇措置、無制限の保証など、あらゆる形の公的補助が含まれる。欧州委は通知に沿って審査を行い、域外国からの補助金によって競争が歪められると判断した場合、必要に応じて資産売却や補助金の返済といった是正措置を求めるほか、買収や落札を阻止することが可能。通知を怠った場合は最大で年間売上高の10%の制裁金を科すことができる。

また、買収や公共調達の取引規模が上記の基準を下回る場合も、域外国からの公的補助によって競争が歪められる可能性があると判断した場合、欧州委は職権に基づいて調査を行うことができる。

EUは単一市場における公正な競争を確保するため、国家補助規制で企業への公的補助を厳しく制限している。しかし域外企業には適用されないため、産業界は中国をはじめとする外国政府の補助金を後ろ盾に国営企業などがEU企業を買収したり、安い価格で入札している可能性があると警戒を強めていた。こうした中で欧州委は20年6月、「外国補助金に関する競争の公平性」と題する白書をまとめ、21年5月に同白書を土台にした規則案を発表していた。

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