欧州委員会のフォンデアライエン委員長は4月25日、インドの首都ニューデリーでモディ首相と会談し、貿易や技術分野における協力関係の強化を目的とした閣僚レベルによる対話の枠組み「貿易技術評議会」を立ち上げることで一致した。また、中断していたEU・インド間の自由貿易協定(FTA)交渉を再開し、6月に会合を開くことでも合意した。
欧州委によると、これまでにEUは米国との間で貿易技術評議会を設置しており、インドは2カ国目。EUは影響力を増す中国を念頭に、インド太平洋地域への関与を強める姿勢を打ち出しており、インドとの連携強化をアジア戦略の柱と位置付けている。ロシアのウクライナ侵攻によって安全保障環境が大きく変化する中、EUとしてはハイレベル対話の枠組みを創設することで、対ロ制裁に加わっていないインドを西側陣営に引き寄せる狙いがあるとみられる。
EUとインドは共同声明で「地政学的な環境が急速に変化する中、相互に戦略的な関与を深化させる必要性が浮き彫りになったとの認識で一致した」と強調。貿易技術評議会は「欧州およびインド経済の持続的な発展に向けて重要な分野で政治的決定を実行に移し、技術的な作業を調整するための助言と必要な体制を提供する」と説明した。
一方、EUとインドは07年にFTA交渉を開始したが、自動車部品などの関税引き下げや知的財産の保護などで折り合えず、13年に中断した。双方は昨年5月の首脳会議で、交渉再開で合意したものの、これまで具体的なスケジュールは示していなかった。双方は6月に開く交渉会合で、FTAと並行して投資保護協定や地理的表示(GI)の保護協定についても協議を開始することで合意した。
フォンデアライエン氏は会談で「EUとインドの良好な関係がかつてないほど重要になっている。EUとインドには多くの共通点があるが、ともに困難な政治情勢に直面している」と指摘。貿易・経済に加え、安全保障や気候変動などの分野でも連携を深める必要があると強調した。