欧州委員会は23日、EU加盟国の財政赤字を厳しく制限する財政規律の適用を一時的に停止する措置の延長を提案した。同措置は新型コロナウイルス感染拡大による経済危機に対応するため導入され、2022年末まで実施される予定だったが、ロシアのウクライナ侵攻などで景気の下振れリスクが高まっていることから23年末まで継続する。加盟国の承認を経て最終決定する。
EUの財政規律を定めた安定成長協定は、各国に毎年の財政赤字を国内総生産(GDP)比3%以内に抑えることなどを義務付けている。違反した場合は是正を求め、制裁を科すこともある。ただ、例外的な状況では「一般免責条項」を適用し、赤字が上限を超えることを認めている。
欧州委は20年3月、コロナ禍が各国の経済、社会に大きな影響を与えている事態が同条項に該当すると判断。各国が苦境にある企業への支援などを柔軟に行えるようにするため、財政規律の適用停止を決定した。当初は21年末が期限だったが、22年末に延長された経緯がある。
ジェンティローニ委員(経済担当)は声明で、ウクライナ侵攻のほか物価高で景気の先行きが不安定となっていることから、「EU経済は依然として正常化とは程遠い」として、同特例措置の適用を延長する必要性を強調した。
欧州委は16日に発表した春季経済予測で、ロシアのウクライナ侵攻などを受けて、ユーロ圏の2022年の域内総生産(GDP)実質伸び率を2.7%とし、前回(2月)の4.0%から1.3ポイント下方修正していた。