EU統計局ユーロスタットが5月31日に発表したユーロ圏の同月のインフレ率(速報値)は前年同月比8.1%だった。ロシアのウクライナ侵攻でエネルギーなどの値上がりが加速し、前月の7.4%から大きく拡大。過去最高を更新した。(表参照)
ユーロ圏では物価が上がりにくい状況が続いていたが、2021年下期からエネルギー価格の上昇、サプライチェーンの混乱で物価が急上昇している。3月以降はウクライナ情勢を受けたエネルギー高の加速、穀物など食品の価格高騰でインフレ率が跳ね上がった。
分野別ではエネルギーが39.2%と高水準を維持したほか、食品も7.5%と大きく値上がりした。工業製品は4.2%、サービスは3.5%。欧州中央銀行(ECB)が金融政策で重視する基礎インフレ率(価格変動が激しいエネルギー、食品・アルコール・たばこを除いたインフレ率)は3.8%で、前月から0.3ポイント拡大した。
国別ではエストニアが20.1%で最高だったほか、リトアニアが18.5%、ラトビアが16.4%とバルト3国が高い。ロシア産天然ガスの購入を停止した影響が出ているもようだ。主要国はドイツが8.7%、スペインが8.5%、イタリアが7.3%、フランスが5.8%だった。
インフレ率はECBが目標値とする2%を大きく上回る水準。ECBはインフレ抑制のため、政策金利の引き上げに踏み切る予定で、ラガルド総裁は先ごろ、現在はマイナス0.5%となっている中銀預金金利を7月にも引き上げ、9月末までにマイナス金利から脱却する方針を示していた。市場では7月に0.25ポイント、9月に同水準の利上げを実施するとの見方が広がっている。
しかし、ウクライナでの戦闘の長期化など、インフレ圧力が下がる材料に乏しく、インフレ率のさらなる拡大が見込まれる中、金融正常化のペースを速め、7月に一気に0.5ポイント引き上げるよう求める声がECB理事会の一部のメンバーから上がっている。