2010/4/28

ロシア

ロシア、ウクライナ向けガス価格値下げで合意

この記事の要約

ロシアのメドベージェフ大統領とウクライナのヤヌコビッチ大統領は21日、ロシア国境に近いウクライナ東部のハルキウで会談し、ロシアがウクライナ向けのガス輸出価格を30%引き下げることなどで合意した。これと引き換えに、ロシアは […]

ロシアのメドベージェフ大統領とウクライナのヤヌコビッチ大統領は21日、ロシア国境に近いウクライナ東部のハルキウで会談し、ロシアがウクライナ向けのガス輸出価格を30%引き下げることなどで合意した。これと引き換えに、ロシアは黒海艦隊が駐留するウクライナ・セバストーポリ港の使用権を最大30年延長できる権利を取得。ガス価格の値下げで、ウクライナは今後10年間で400億米ドル以上の歳出が節減されることになり、財政再建に大きく寄与しそうだ。

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ガス価格値下げは、ロシアが課している30%の輸出関税を免除することで実施され、国営ガス企業ガスプロムの業績には影響が出ない。ウクライナは今年、ロシアから365億立方メートルのガスを輸入する見込みだが、ロシアはこのうち300億立方メートルについて、割引幅が1,000立方メートル当たり100ドルを超えない範囲で3割の割引を適用する。来年以降は現在の契約が切れる2019年まで、割引適用量を400億立方メートルに拡大。ウクライナの今年度予算では、ロシアに対するガス代を1,000立方メートル当たり334ドルと算出していたが、割引が適用されれば234ドルまで下がり、今年だけで30億ドルが節約される計算だ。

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ウクライナはガス価格急上昇による国内経済への影響を緩和しようと、一般世帯や公益事業者向けのガス価格に補助金を支出し、価格を抑えている。ロシアが値下げに応じたことで、この支出も「不要になる」(ブルームバーグ)とみられ、実際の節減額は値下げ額以上に膨らむ見通しだ。

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また両大統領の会談では、ガスプロムが欧州向けのガス輸出で使用するウクライナ領内のガスパイプライン利用料について、現行の毎月20日払いから、8割を毎月6日に支払う方式に変更することで合意。毎月7日にガス代の支払いを義務付けられているウクライナに配慮したためで、支払いが滞る可能性も低下が見込まれる。

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ただ、ロシアがガス代を値下げした分は、セバストーポリ港の使用権契約更新に伴い、ウクライナが2017年に引き上げを予定するロシアの同港使用料支払い額を軽減することで埋め合わせる見通し。それでも財政危機に直面しているウクライナだけに、「この合意で財政赤字は大幅に縮小する」(ノムラ・インターナショナルのエコノミスト、チャカロフ氏)と市場では評価が高く、「ウクライナの2年物国債の利回りは、夏までに2年ぶりで10%を切る」(ウニクレディト・Gourov氏)との声も出ている。

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