ロシアや中央アジア産原油をブルガリア経由でギリシャに輸送するパイプラインの建設計画から、ブルガリアが撤退する可能性が高まっている。パイプラインによる環境汚染を懸念する声が国内で強まっているためで、環境アセスメントの結果を待って判断する。
\ブルガリアは2008年3月、黒海沿岸のブルガスとエーゲ海沿岸のアレクサンドロポリスを結ぶ石油パイプラインの建設でロシア、ギリシャと正式に合意した。このパイプライン計画はロシアが主導し、ロシアをはじめ旧ソ連産の原油を、タンカー航行が限界に達しているトルコのボスポラス海峡を迂回して欧州に輸送するルートを確保するのが目的で、総延長は300キロメートル。総工費は10億ユーロを見込んでいる。
\ブルガリアのボリソフ首相は11日、米メキシコ湾の原油流出事故を受け、パイプラインの敷設予定地であるブルガスで環境汚染を懸念する地元住民からの反発が強まっていることや、採算性に疑問があることなどを理由にプロジェクトから撤退する意向を表明した。しかし、直後に政府広報室を通じた声明で発言を訂正。環境アセスメントの結果を見て撤退の是非を決定すると発表した。
\昨年7月に発足した中道右派のボリソフ政権は、ロシア産天然ガスを黒海経由で南欧に輸送するパイプライン「サウス・ストリーム」計画や、ドナウ川沿岸ベレネの原子力発電所建設計画などロシア主導のエネルギープロジェクトに慎重な姿勢を見せており、ベレネ原発についてもロシアが申し出ていた融資を断り、西欧の投資家から資金を調達する方針を明らかにしている。独立系シンクタンク、ポリティカル・キャピタルのアナリスト、アブラモフ氏は、こうしたボリソフ政権の姿勢について、「ロシアへのエネルギー依存から脱却し、独立性を高めるという堅固な政治的意思の表れ」と分析する。
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