2011/5/18

ロシア

メドベージェフ大統領、プーチン首相の「人民戦線」構想に距離

この記事の要約

プーチン首相が6日、自らが率いる政権党「統一ロシア」を軸に、「全ロシア人民戦線」を結成する構想を明らかにしたことに対し、メドベージェフ大統領は12日、「正当な戦略」とコメントする一方で、「政治論争を保障するのが大統領の務 […]

プーチン首相が6日、自らが率いる政権党「統一ロシア」を軸に、「全ロシア人民戦線」を結成する構想を明らかにしたことに対し、メドベージェフ大統領は12日、「正当な戦略」とコメントする一方で、「政治論争を保障するのが大統領の務め」と話し、同構想から距離を置く立場を明らかにした。来年3月の大統領選挙を前に、プーチン首相とメドベージェフ大統領の権力闘争が本格化するとの観測が浮上している。

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プーチン首相は「人民戦線」に労働組合や経済団体などの政治団体ではない組織を組み込み、12月の国会議員選に臨む方針だ。ロシアの政情に詳しい専門家は、「統一ロシア」への支持率低下を受けて、プーチン首相が態勢の建て直しに入ったと分析する。「人民戦線」結成で支持基盤を再編して国会選で勝利し、3月の大統領選で当選するというシナリオが背景にあるとみている。

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他政党は、「統一ロシア」を選挙敗退の憂き目から救うための策略として、同構想を強く非難している。メドベージェフ大統領のコメントは、「人民戦線」が「統一ロシア」の宣伝の道具であり、大統領の任務が他の政党の活動を保障することにあるとする意見を反映したもののようだ。

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大統領は、どの政党が政権をとるかは選挙後にわかることであり、法律に則って政党間の競争を保障し、国家の安定を図るのが大統領の任務と話した。また、すべての結果が事前に決まっているような政治制度の「将来はない」として、翼賛型の政治の現状を批判した。

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プーチン首相は08年、大統領の連続3選が禁止されているためにメドベージェフ氏を後任に指名。両氏との二人三脚で政治を運営してきた。しかし、最近ではリビア紛争、ホドルコフスキー裁判など見解の相違が明らかになり、2人の間の亀裂が深まっているとの推測も出ていた。今回の「人民戦線」を機に、政治家としての生き残りをかけた戦いが始まる可能性もある。

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大統領選については、両氏ともに来年3月の出馬を否定しておらず、見通しがまったく立っていない。

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「統一ロシア」は、国内政治の支配と革新的な思想の欠如がソ連共産党に似ていると批判されている。独立系の世論調査会社Lavadaによると、その支持率は昨年の62%から先月には55%に低下している。

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