2011/9/7

総合・マクロ

ロシアとウクライナ、天然ガス紛争再燃か

この記事の要約

天然ガス供給をめぐってロシアとウクライナの対立再燃が懸念されている。ウクライナ政府がロシア政府に現行契約の価格見直しを求めているためだ。ロシア政府はウクライナ国営のナフトガスとガスプロムの合併承認を条件として話し合いに応 […]

天然ガス供給をめぐってロシアとウクライナの対立再燃が懸念されている。ウクライナ政府がロシア政府に現行契約の価格見直しを求めているためだ。ロシア政府はウクライナ国営のナフトガスとガスプロムの合併承認を条件として話し合いに応じる姿勢を示しているが、ヤヌコビッチ・ウクライナ大統領は合併問題とは切り離して解決を図りたい考え。国際裁判所への提訴も辞さない構えで、協議は平行線をたどっている。

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両国間のガス価格紛争では、ガスプロムが2006年以来、2回にわたりウクライナへのガス輸送をストップした経緯がある。09年にガスプロムとナフトガスが期間10年の供給契約を締結して事態は一段落したに見えたが、ウクライナ政府は今回、価格が高すぎるとして見直しを求めた。

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ウクライナ政府は国際通貨基金(IMF)による融資実施に向けて財政赤字削減を迫られている。ロシアからのガス購入価格を抑えることで、国内のガス料金を値上げすることなく支出を削減したい意向だ。

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09年の契約では、ガス価格は石油価格と連動している。11年7-9月のガス価格は1,000立方メートル当たり355米ドルとなる見通しで、4-6月の295ドルから大きく上昇するのは間違いない。ヤヌコビッチ大統領はすでに今年5月の時点で240ドルに引き下げたい意向を明らかにしている。

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なお、契約はウクライナが年間330億立方メートル以上、購入することを義務付けているが、アザロフ・ウクライナ首相は先月、「ロシアからの輸入を今後数年で現在の3分の1に減らす方策を検討すべき」との立場を明らかにした。

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一方のロシア政府は現行契約が法的に有効であり、見直しは必要ないとみている。メドベージェフ大統領は報道官を通じ、「契約は履行するものであり、一方的な見直しには応じられない」とのコメントを発表した。また、国際裁判所に提訴されても堂々と受けて立つとしている。

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過去2回のウクライナへのロシア産天然ガス供給停止では、欧州でもガス不足が生じた。このため、両国の動向には欧州諸国の注目も集まる。

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ウクライナは昨年8月、IMFから総額151億ドルの融資を受けることで基本合意した。しかし、融資条件である年金改革やガス料金引き上げが遅れていることから、今年3月に予定されていた第3回融資はいまだに実施されていない。

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