2012/3/28

チェコ・スロバキア

ロスアトム、テメリン拡張事業で10社と提携

この記事の要約

ロシア原子力公社(ロスアトム)の国外事業部門であるロスアトム・オーバーシーズは20日、チェコのテメリン原子力発電所拡張事業で、チェコとスロバキアの10社と提携することで基本合意したと発表した。同事業を受注した場合に下請け […]

ロシア原子力公社(ロスアトム)の国外事業部門であるロスアトム・オーバーシーズは20日、チェコのテメリン原子力発電所拡張事業で、チェコとスロバキアの10社と提携することで基本合意したと発表した。同事業を受注した場合に下請け発注する。同時に、プロジェクトに必要な資金の最大100%まで投資する用意があることを明らかにした。同原発を運営する国営電力CEZが投資パートナーを模索していることもあり、資金提供で他の応札予定企業・連合に差をつける狙いだ。

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提携合意したのは、チェコのI&Cエネルゴ、ETDトランスフォルマートリ、カベロヴナ・カベックス、MSA、スロバキアのSESトルマチェなど10社。チェコ企業については、ロシアがチェコ以外で受注した原発建設(原子炉30基)にも参加する機会を得る。

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ロスアトムは国外からの原子炉受注の増加に力を入れており、2030年までに原発建設事業の下請け発注額が3,000億米ドルに拡大すると見込む。

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テメリン原発の拡張工事で、ロスアトムグループの原子力企業アトムストロイエクスポルトと原子炉メーカーのギドロプレス、露OMZグループのチェコ原子力子会社シュコダから成るロシア連合は共同受注を狙っている。国内企業への利益還元は入札の条件ではないものの、発注元のCEZ、政府ともにチェコ企業への下請け発注を重要な判断基準に挙げている。

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このため、他に応札を予定する仏アレバ、東芝の米国子会社ウエスチングハウスも地元企業と同様な合意を結んでいる。

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ただ、出資提案を行ったのはロスアトムが初めてだ。アレバもウエスチングハウスもこれまで投資の可能性を否定しており、ロスアトムが優位に立つ可能性もある。

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ロスアトムは、出資が実現した場合でもその金額はプロジェクト総額の49%以内とみる。形態としては、CEZ株式の取得、新設される3号炉、4号炉の運営で合弁会社設立など、さまざまな可能性があるが、いずれにしてもロシア・チェコ政府間の協定が必要となるとしている。

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CEZは費用を自己資金および借入金で賄えるとしてきた。しかし、他のプロジェクトも抱えており、負担軽減に向けて先月、フランスのBNPパリバに投資家探しを依頼した。プロジェクトの採算が取れないとの試算もあり、資金面での不安要素が存在する。

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ロシアの提案を受ければ資金問題は解決するが、チェコ政府は外交政策上、難しい立場におかれることになる。体制変換後に一貫してとってきた、ロシアから距離を置き、西欧との結びつきを強める政策に反するためだ。

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テメリン原発拡張工事は7月2日に応札が締め切られる。来年中に落札者が決定し、2025年までに新炉を稼動させる。プロジェクト総額は2,000億~3,000億コルナと見込まれている。(1CZK=4.49JPY)

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