財政危機に陥っているスロベニアで12月2日実施された大統領選挙の決選投票は、社会民主党のボルト・パホル前首相(49)が現職のダニロ・テュルク候補(60)に大差をつけて当選した。投票率は1991年の独立後の大統領選挙として最低の42%弱にとどまった。
\開票がほぼ完了した段階での得票率は、パホル候補が67.4%、テュルク候補が32.6%。先月の第1回投票でもパホル候補が優勢だったが、これほどの差がついたことに識者も驚いている。
\記録的に低い投票率については、両候補とも左派に属し、政策的な面であまり差がなかったことが原因とみられる。ただ、パホル氏は選挙戦中、テュルク氏と異なり、中道右派のヤンシャ政権との協力関係を重視する姿勢を示し、これが与党支持者に受け入れられたもようだ。
\パホル氏は10代で共産党に入党し、1989年、26歳の若さで中央委員に選ばれた。33歳で党首に就任後、党を改革して現在の社会民主党の姿に変えた。スロベニア議会議員、欧州議会議員を務めた後、2008年に首相となったが、11年に社会保障制度改革に失敗。議会による内閣不信任決議で退任に追い込まれた。政治的な復活は不可能とみられていたが、今回の選挙で見事にこれを成し遂げた。容姿・服装ともに整っているパホル氏は女性の人気が高く、アンケート調査によると「結婚してもいい」と思う女性は40%に上るという。
\ \■抗議行動が拡大
\ \先月26日にスロベニア第2の都市マリボールで始まった抗議行動は首都リュブリャナにも拡大している。ヤンシャ政権の計画する社会保障改革など財政緊縮政策に反対するものだが、同時に政治・経済的エリートの汚職体質に抗議する声も出始め、その要求が多様化しつつある。6日には全国の都市でデモが行われる予定だ。
\スロベニアは金融危機に端を発する不景気で2009年以来、国内総生産(GDP)が8%以上縮小した。大手銀行の不良債権が膨張して国の信用格付けが下がり、資金調達コストが上昇している。失業率は11.6%と高い。欧州委の予測では今年も2.3%の経済縮小が見込まれている。(東欧経済ニュース11月21日号「スロベニア、バッド・バンク設立にブレーキも」を参照)
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