2014/3/19

総合・マクロ

プーチン大統領、クリミア共和国の編入方針を表明

この記事の要約

プーチン大統領は18日、連邦議会での演説でウクライナ・クリミア自治共和国のロシア編入を迅速に進める意向を公式に表明、上下院議員に協力を要請した。同自治共和国政府が17日に編入を正式に要請したことを受けたもので、早ければ2 […]

プーチン大統領は18日、連邦議会での演説でウクライナ・クリミア自治共和国のロシア編入を迅速に進める意向を公式に表明、上下院議員に協力を要請した。同自治共和国政府が17日に編入を正式に要請したことを受けたもので、早ければ21日にも議会が編入を取り決める国家間条約を承認する見通しだ。欧米諸国はすでに17日の時点で対ロシア制裁を強化したが、ロシアによるクリミア併合の動きが進めば、措置を追加することになるとみられる。

クリミア自治共和国ではロシア編入の是非を問う住民投票が16日実施された。選挙管理委員会が17日発表した開票結果によると、賛成が96.8%の圧倒的多数を占めた。反対は2.5%、無効票は0.7%だった。これを受けて自治共和国政府はウクライナからの独立を宣言。同日中にロシア政府へ編入を正式に申請した。プーチン大統領は独立を承認すると同時に編入手続きを迅速に進める姿勢で、欧米とロシアの関係はさらに緊張が強まっている。

欧米諸国は17日、ロシアがウクライナ暫定政府との交渉拒否を続けていることを受けて対ロシア制裁を強化した。欧州連合(EU)はロシアおよびクリム自治共和国政府の政治家・軍関係者など21人に対して、渡航を禁止し資産を凍結する。米国も11人に同様の措置を適用する。また、18日には主要8カ国会議(G8)からロシアを除外することも決まった。

クリミア住民投票がロシアの軍事介入下で実施され、ウクライナ憲法および国際法に違反するという欧米諸国の非難に対し、ロシアは投票が国際法および国連憲章に沿うものとの立場だ。

一方で、プーチン大統領は17日、多くの条件付きながらも欧米諸国とウクライナ問題解決に向けて対話を行う姿勢を示した。ウクライナ暫定大統領も条件付きでロシア政府と交渉する用意があると言明している。ただ、関係国間の溝は大きく、交渉開始に向けた条件のすり合わせが成るかどうかがカギとなる。

クリミア半島は1954年にソ連のフルシチョフ第一書記(当時)がウクライナに帰属を変更するまで、ロシア領だった。スターリン時代にクリミア・タタール人が追放されたこともあり、ロシア系住民が現在6割を占める。黒海艦隊の母港セバストポリを擁し、ロシアにとって戦略的に重要な地域でもある。

■東部情勢も不安定に

クリミア半島の動きを受けて、ウクライナ東部のハルキウ(ハリコフ)やドネツィク(ドネツク)でも親露派が住民投票の実施を求めている。ウクライナ右翼の事務所への放火や、路上の撃ち合いで2名が死亡する事件が起こるなど、住民同士の対立が先鋭化しているもようだ。ロシア外務省は東部のロシア系住民からの保護要請が数多く寄せられているとしており、これらの地域にもロシア軍の介入が広がるのではとの懸念が膨らんでいる。

ウクライナ議会はクリミア住民投票の結果を受けて、国防体制を強化するため予備役4万人の召集を決定した。ロシア軍がクリミア半島のウクライナ軍施設の封鎖を一時解除する「停戦合意」の期限が21日に切れることもあり、緊張が高まっている。

■クリミア共和国、編入の「既成事実化」急ぐ

クリミア自治共和国議会は、(1)ロシア通貨ルーブルを第2の通貨として導入(2)ウクライナのエネルギー企業のクリミア事業「国有化」――といった措置を矢継ぎ早に実施。ロシアへの編入の既成事実化を急いでいる。(1)ではウクライナ通貨フリブナの通用期限を来年末に設定した。