2014/3/26

総合・マクロ

ウクライナと連合協定の政治条項に調印、ロシアの軍事圧力に対抗

この記事の要約

EU(欧州連合)は20、21日に開いた首脳会議で、ウクライナとの間で政治・経済面の連携を強化する「連合協定」の政治条項に調印した。ロシアがウクライナに対する軍事圧力を強めるなか、EUとして同国を全面的に支援する立場を国際 […]

EU(欧州連合)は20、21日に開いた首脳会議で、ウクライナとの間で政治・経済面の連携を強化する「連合協定」の政治条項に調印した。ロシアがウクライナに対する軍事圧力を強めるなか、EUとして同国を全面的に支援する立場を国際社会にアピールする狙いがある。EU加盟国はこのほか、エネルギー分野でロシア依存からの脱却を急ぐことや、クリミア半島の編入を決めたロシアに対する追加制裁の内容で合意した。

EUとウクライナは当初、昨年11月に連合協定に調印する予定だった。しかし、ヤヌコビッチ前政権は会議直前になって調印を見送り、低迷する経済の立て直しを図るためロシアとの関係改善を最優先する方針を打ち出した。ウクライナではこれをきっかけにEUとの関係強化を求める国民による反政府デモが急速に拡大し、ヤヌコビッチ政権の崩壊につながった。

将来のEU加盟に向けた第一歩と位置付けられる連合協定のうち、調印したのは政治面の連携強化に関する条項。双方は民主主義や法の支配といった基本的な価値観を共有し、司法制度や選挙制度などの近代化に向けて協力する。一方、自由貿易協定(FTA)を含む残りの条項に関しては、5月25日に実施されるウクライナの大統領選挙後に調印する方針を確認した。

ウクライナのヤツェニュク首相は協定調印について「EU加盟に向けた大きな一歩だ」と強調。EUのファンロンパイ大統領は「民主主義、自由、法の支配といった普遍的な価値観を共有する国で生活したいというウクライナ国民の切実な願いに応えるものだ」と述べた。

一方、エネルギー政策の見直しはキャメロン英首相などが提唱していたもので、加盟国は6月のEU首脳会議でエネルギー安全保障の枠組みについて協議することで合意した。EUは域内で消費する天然ガスの4分の1以上をロシアからの輸入に頼っており、東欧では実質的に100%ロシアに依存する国もある。ロシアが輸出する天然ガスの53%はEU向けとなっており、経済的にみて「EUがロシアを必要とする以上にロシアはEUを必要としている」(キャメロン首相)という側面はあるものの、クリミア編入を受けた制裁に対する報復措置としてロシアが欧州向けのガス供給を止める可能性もあり、EUとしてはこうした最悪の事態に備える必要がある。

ファンロンパイ大統領は「いま行動を起こさなければ、2035年までに原油と天然ガスの80%を域外からの輸入に頼らなければならなくなる」と指摘。「とりわけロシア依存からの脱却が重要なカギになる」と述べた。次期首脳会議では◇再生可能エネルギーを中心にエネルギー源の多様化を進める◇加盟国間で電力やガスを相互に融通できるよう、エネルギー供給網の相互接続を拡充する◇米国からのシェールガスの輸入――などを柱とする行動計画が策定される見通しだ。

首脳会議ではロシアに対する制裁措置として、EU内の資産凍結と渡航禁止の対象に政府高官ら12人を追加することを決めた。同日に追加制裁を発表した米国と歩調を合わせ、ロゴジン副首相やナルイシキン下院議長など、プーチン政権中枢の名前がリストに並んでいる。EUは17日にロシアとクリミアの政府関係者ら21人に対する制裁を発表しており、今回の追加措置で制裁対象者は33人に拡大した。

EUはこのほか、6月に予定していたロシアとの首脳会議を中止し、加盟国もロシアとの2国間の首脳会議を自粛することで合意した。