2014/10/15

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

ブルガリア電力業界の赤字、低料金が原因=欧州委

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州委員会はこのほど発表した報告書で、ブルガリア電力業界の赤字体質について、電力料金の過剰な低さが要因と指摘した。同料金は名目額で他のEU加盟国を引き離して最低の水準にあるが、加えて2008年から12年 […]

欧州連合(EU)の欧州委員会はこのほど発表した報告書で、ブルガリア電力業界の赤字体質について、電力料金の過剰な低さが要因と指摘した。同料金は名目額で他のEU加盟国を引き離して最低の水準にあるが、加えて2008年から12年までほとんど引き上げられておらず、再生可能エネルギー助成などで膨らむコストを賄えきれていない点を問題視し、同問題の改善には値上げだけでなくコジェネレーション助成の削減、電力輸出に向けたインフラ整備など総合的な取り組みが必要としている。

ブルガリアは政府が一般世帯向け電力料金を統制している。しかし、公益企業の経費に比べてその水準は低い。世界銀行によれば、同国電力産業の赤字は昨年だけで8億~12億レフ(4億~6億ユーロ、国内総生産=GDPの1~1.5%)に上った。また、電力公社NEKの有利子債務は昨年末時点で推定23億レフ、このうち4分の1が電力会社への買掛債務となっている。

さらに、外資系配電大手3社はNEKへの債務、合計3億4,760万レフが未払いとなっている。再可エネ事業者に支払った割増料金のうち政府助成分が償還される約束だったが、これをまだ受け取っていないため、NEKへの支払い分を一部保留している形だ。

ただし、欧州委は再可エネの比率拡大が赤字の原因とはみていない。ブルガリアはEUの多くの電力赤字国と並び、再可エネ比率がEU平均を下回っているためだ。

赤字の背景の一つとしては、ブルガリア当局が電力事業の損失を公的債務と認識していないことを挙げる。その根拠として、◇公益事業の会計基準が存在しない◇経費削減に向けたコスト・ベンチマーキングの欠如◇内部補填や長期電力調達契約に起因する市場のゆがみ――を指摘する。

解決策としては、世銀の見解を引用している。これによると、(1)料金をある程度引き上げる(2)コジェネ電力の買い取り価格引き下げ(3)再可エネ助成・長期電力調達契約・投資の失敗に起因する負担の公正な分配(4)貧困層対策として、電力値上げの影響を和らげる他の助成措置(暖房手当など)の増額(5)余剰発電能力を利用した電力輸出――といった、包括的な対策が求められる。

(1)と(4)については、電力料金の14%引き上げが昨年2月の反政府デモ・ボリソフ内閣退陣につながったこと、以降、段階的に13%引き下げられたことに言及し、料金を見直すだけでは解決につながらないとの立場を示した。(5)については、輸出に向けて送電インフラの整備が必要になると指摘している。

また、(3)については風力・ソーラー発電に対する投資が昨年だけで40億ユーロに上ったとし、事業者がこの投資資金を今後、電力料金を通じて回収していくという事実に改めて目を向けている。

欧州委リポートによるとEU加盟国のうち電力事業の赤字に悩んでいるのはブルガリアのほか、スペイン、ポルトガル、フランス、マルタなど11カ国に上る。

なお、ブルガリアのエネルギー監督庁(DKEVR)はリポートの公表直後に10%の電力料金引き上げを発表した。(1BGN=69.37JPY、東欧経済ニュース3月26日号「ブルガリア、外資系配電会社の事業免許取り消しへ」を参照)