2014/12/3

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

トルコの保安法案に「警察国家」の懸念

この記事の要約

トルコの与党・公正発展党(AKP)が議会に提出した「保安一括法案」に警察国家復活の懸念が浮上している。成立すれば、警察に対する内務省の影響力が強まるほか、被疑者の長時間拘束が容易になる。野党や人権保護団体は基本的人権・自 […]

トルコの与党・公正発展党(AKP)が議会に提出した「保安一括法案」に警察国家復活の懸念が浮上している。成立すれば、警察に対する内務省の影響力が強まるほか、被疑者の長時間拘束が容易になる。野党や人権保護団体は基本的人権・自由を侵害するものとして強く反対している。

法案によると、「自身及び他者の安全を脅かした」と警察が判断した場合、警察は逮捕状なしにその人物を拘束できる。主眼は抗議行動の監視で、無許可デモの参加者は最長24時間、デモが「暴動化」した場合には最長48時間拘束される恐れがある。また、デモで花火や火炎瓶が使用された場合、警官は発砲が許される。

裁判官の許可なしに警察が通信を盗聴・傍受できる時間は、現行の24時間から48時間に延長される。

警察組織の改編では、◇警察大学と警察アカデミーの閉鎖を含む教育・研修システムの改組◇人員の募集・任命・解任の規定変更――などが予定される。

保安警察・国境警備隊の改編では、任務に応じて組織を軍事・非軍事部門に分割し、軍事部門は参謀長の管轄下に、非軍事部門は内務省の管轄下に置く。

地方自治体首長は、警察および保安警察に犯罪捜査を命じることができるようになる。この場合、事後的に裁判所に許可を申請する。現行法では検察官にのみ、この権利が認められている。

エルドアン大統領は国民に繰り返し、「非道徳的」な行為を警察に届けるよう呼びかけているほか、「暴徒」の取り押さえなどに市民が積極的に協力すべきと言明している。以来、入籍前のカップルの同棲(せい)や、男女のグループが共同で住んでいるルームシェアを密告するケースが増加した。

また、ある店主が、市民警察官と一緒になってデモ参加者を殴打し、死亡させた事件の裁判について、エルドアン大統領は、小売店主やタクシー運転手に対し、いざとなったら「警官や裁判官」の役割を果たすよう呼びかけるなど、容認を示唆している。このため、住民間のスパイ・密告や私刑の横行が懸念される。