2015/10/7

総合・マクロ

難民分担計画の多数決決定は「違法」、スロバキアが欧州裁に提訴へ

この記事の要約

スロバキア政府は9月30日、欧州に押し寄せる難民を加盟国が分担して受け入れる案を多数決で決めたことはEUルールに違反するとして、欧州司法裁判所に提訴する方針を明らかにした。難民政策のような重要な問題では議論を尽くして全会 […]

スロバキア政府は9月30日、欧州に押し寄せる難民を加盟国が分担して受け入れる案を多数決で決めたことはEUルールに違反するとして、欧州司法裁判所に提訴する方針を明らかにした。難民政策のような重要な問題では議論を尽くして全会一致の合意を目指すべきで、多数決で反対派を押し切ったかたちの決定を受け入れることはできないと主張している。

EU加盟国は9月22日に開いた臨時内相理事会で、紛争が続くシリアなどからギリシャやイタリアに流入する難民12万人の受け入れ分担案を賛成多数で承認し、すでに合意済みの4万人と合わせて計16万人を今後2年間で受け入れることを決めた。議長国のルクセンブルクは全加盟国による合意を目指し、分担案に反対する東欧諸国の説得に努めたが、調整は不調に終わり、最終的に加盟国の人口などを加味した特定多数決による採決を断行。チェコ、ハンガリー、ルーマニア、スロバキアの4カ国が反対票を投じ、フィンランドが棄権に回った。

スロバキアのフィツォ首相は訪問先の同国西部ニトラで行った記者会見で「本日の閣議で義務的な難民の受け入れ分担を受け入れることはできないとの立場を確認した」と述べた。また、司法省幹部は難民政策のような重要な分野で多数決が許されるのは、緊急性がある場合で、かつ一時的な措置に関する事案に限られると指摘。向こう2年間の難民受け入れ計画はこうした要件を満たしていないとし、「多数決による閣僚理事会の決定は認められない。これはEUの意思決定プロセスに対する重大な違反であり断固として戦う」と表明した。

欧州委の報道官はスロバキアの対応について、重要政策が多数決に持ち込まれるケースは稀ではあるものの、完全にEUルールに沿った意思決定の手法だと指摘。「加盟国は閣僚理による決定に対して法的に対抗する権利を持つが、審理中はEUの決定に従う義務がある」と述べた。

欧米メディアによると、分担案に反対した他の3カ国のうち、チェコとルーマニアは提訴の可能性を否定。ハンガリーは対応を検討中と報じている。